野球部の女子マネージャーのみなみは偶然ドラッカーの経営書 『マネジメント』 に出会う。初めはは難しさにとまどうが野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付き始める。ドラッカーの教えを元に女子マネージャーが野球部の甲子園出場を目指しマネジメントをする青春物語。ライトノベル的盛り上がりもあります。
(岩崎夏海)1968年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。放送作家、AKB48のプロデューサーを経てマネジャーとして吉田正樹事務所に勤務。
まず、非常によくできた構成だと思います。ドラッカーの文章なんてこの本を読まなければ一生読まなかったことでしょう…岩崎さんどうもありがとう。
表紙のオタっぽい女子高生のマンガ(挿画)といい、展開のノリがライトノベルなところといい、エンタメの要素を見事なまでに随所に盛り込んだ上でドラッカーの 『マネジメント』 をここまで楽しく読ませるとは。もしや天才?(笑)組織の経営について書かれた本を、社会におけるあらゆる組織(人の集合体)に応用できると説いた本書の功績は、大きいですね。
言い換えればここまで分かりやすくストーリー形式(というよりマンガ的展開)にしないと、理解できない大人(※私)が増えてしまったのか…ということですが。
組織は常に顧客を意識し、顧客の満足を第一義に考えなくてはならない。マネジャー(管理職)は人事、報酬で応えなくてはならない。マネジャーに何より大切なことは 『真摯さ』 である。真摯であること…それが全体を見通せることより人柄よりリーダーシップより、何よりも大切だ、と説くドラッカー。あなたのために精一杯やってます!という 『誠意』 。が何よりも大切。だそうです。
ここでいつもお中元、お歳暮でお世話になっている東京の老舗デパート●越の対応を思い出しました。ほんのわずかな注文だと言うのに、のしがおかしくないかとか包装はなしでよいとあったが個別に袋を付けるかとか、わざわざ電話で聞いてくるのです。電話で出ないとメールを寄越してきます。この 『恐れ入りますが…』 と控えめながらお客の間違いを正して差し上げねば、というプロ精神、果たして私は持ち合わせているのか?
『マネジメント』 を教本に、野球部マネージャーみなみは部員一人ひとりにコーチングを行い、それをフィードバックし、一人ひとりの強みを活かしそれが組織(野球部)の活性化につながるよう様々なプロジェクトを仕掛けていきます。まず組織の構成員を知る。活かす。組織を育てる。そして組織が社会で貢献する道を模索し、実行する。
どんな組織も一人では成り立たず、一人ひとりに責任を負わせる、それも喜んでやりがいとして負わせることで組織を成長させる。うーん上司として理想ではないか、みなみちゃん!この 『人に任せる、責任を持ってもらう』 というのが一番難しいですよね。でもそれができないと組織は育たない。
私はどんな組織に属しているでしょう。サークル、学校ボランティア、家庭。あらゆる場面で組織に属している現代人には、ドラッカーの理念が応用できる。ということに気付かせてくれる、スゴイ一冊です。社会学、文化人類学的視点から見ても、面白いです。
評価:(しかしすぐ内容を忘れてしまうのはナゼ…)