一言で言うとちょっとアイコの人物像の書き込みが足りないように感じます。アイコの心の闇があんまり迫ってこない。アイコは戸籍もなく、違法売春宿で育ったため正確な年齢も分からず、そこが摘発に遭い初めて世間の日の目を見ます。児童養護施設へ引き取られ、初めてまともに食事を与えられ、着る物を与えられ、教育を受けるのですが、そこでも他者との関わりを拒否しながら育つアイコ。
物語中アイコは母の形見だという古い白いパンプスを箱に入れていつも大事に持ち歩いています。施設でも施設を出た後でもいつも一緒の古ぼけた靴。この靴とアイコのやりとりの描写が秀逸なくらいで、やや物足りなさを感じました。せっかくだからもうちょっとアイコの人生について書き込んで欲しかったな。
やがてアイコは置屋時代の人々の俗物的な争いに巻き込まれていき、本物の 『ママ』 に再会するのですが、それも私としては納得いかない。『ママ』 は最後まで分からない方が良かったなぁ…というのが私見です。素材がいいなぁと思わせるだけに、ちょっと残念かな。