1890年代ヴィクトリア朝イギリス。エマは良家の家庭教師を引退した老婦人ケリーの使用人であったがかつてのケリーの教え子で有力な貿易商ジョーンズ家の跡取りウィリアムと出会い恋に落ちる。ケリーの死により仕事を失ったエマは、身分違いの恋も諦めロンドンを去り生まれ故郷を目指す。偶然にもハワースの貿易商メルダース家でハウスメイドの職を得たエマは熱心な働きぶりで主人やメイド長らに評価され、ある日メルダース夫人に同行してロンドンへ出かけることとなる。そこで再びウィリアムと出会うのだが、その場はウィリアムの婚約披露パーティだった。階級社会に生きる若い2人の波瀾万丈な身分違いの恋を描く。
(森薫)1978年東京都生まれ。漫画家。同人誌活動を経て本作でデビュー。主な作品に 『シャーリー』 『乙嫁語り』 『森薫拾遺集』 。
森薫デビュー作。純愛モノではありますがイギリス19世紀末のヴィクトリア朝時代の風俗へのスポットの当て方が、とにかくオタク目線でスゴイ作品です。メイドさん服のフリルとかこれでもかこれでもかと描かれています。デビュー作らしく1、2巻は画もあんまり巧くなくストーリー展開もイマイチなのですが、3巻くらいから画も巧くなり話が乗ってきて俄然面白くなってきます。本編は7巻で一応完結で、8、9、10巻は他の登場人物らのスピンオフを集めた短編集、という作りになっていますが、実はこの8巻以降の方が面白かったりするという、本末転倒な作品です。
森薫氏の作画へのこだわりと登場人物ら一人ひとりに対する愛情の深さをこれでもかと知ることのできる作品です。ヴィクトリア朝の風俗について描かれた副読本 『エマ・ヴィクトリアンガイド』 もこれまた内容すごすぎ。ここまでやるかっ。のオタク的展開で潔いです(笑)。本編と併せてお楽しみください。
全10巻、貸出可能です。こだわりのある作家が好きな私にピッタリの漫画家ですね(笑)。
評価:(5つ満点)