心配症の芭子(はこ)と能天気な綾香。一回りも年の違う仲の良い友人である2人には、他人に言えない過去があった。ペット服製作とパン職人というそれぞれの仕事でも順調に歩んでいる二人の前に、夫のDVに苦しむ女が現れるが。世間の目に怯えつつもいつかは自分たちも陽のあたる場所で生きて行きたいと人生を模索する、刑務所帰りの2人を描く 『いつか陽のあたる場所で』 続編。yomyom13号掲載。
(乃南アサ)のなみあさ。1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。
yomyomでこれだけは見逃せないシリーズ。別に派手な事件が起こるわけでもないし、ノンキ者の綾さんと心配性の芭子ちゃんの、何でもない日常なんだけど、そこがまたぐっと惹きつける何かがあるんだなぁ…こういう小説を書ける人になりたいものです。
2人は行きつけの飲み屋でアルバイトを始めたある主婦と親しくなる。可愛らしい外見とうらはらに案外ずうずうしい彼女、たおやかに見えて案外根強い、『コスモス』 というアダナを付けてややうっとおしがってはいても仲良く付き合ってきたのだが…。大人になってからの友達って、子どもの頃に比べるとちょっとだけ難しい。お互いの家庭環境や経済事情といったことが絡み合って気を遣ったり遣われたり。子どもの頃は思ったことをそのまま伝えられたのに、大人になるとそれができなかったり。
コスモスが夫のDVに苦しんでいることを知った2人、特に綾香はそれが原因で服役まですることになったためにその心情は…とこちらもハラハラするものの、結局2人は当人が決めること、と一線を置くことを決める。周囲が助けたくても助けられない、だからDVは根が深いのですね。少しずつ自立してきた芭子と綾香にも世間とのつながりができてきて嬉しい反面、やはり思うように行かないことは多く、2人と共にまた溜め息をつきながらも、今日も生きていくのであります。
評価:(そろそろ単行本2作目?)