高校中退者のほとんどは日本社会の最下層で生きる若者達である。いま貧しい家庭から更なる貧困が再生産されている。この貧困スパイラルを解く方法はないのか。元高校教諭である著者が高校中退の現実と背景を貧困問題と共に論じる。
(青砥恭)1948年松江市生まれ。明治大学法学部卒業。元埼玉県立高校教諭。関東学院大学法学部講師(非常勤)。『子育てと教育を語る会』 代表。
あちこちで紹介されている書評を見るにつけやっぱり読みたくなり、2010初新書購入。最初からたくさんの統計データを提示してくれるのはとてもよいのですが、若干グラフが分かりにくいと言いますかグラフそのものの見せ方・まとめ方にもう少し工夫が欲しかったですね。どれとどれのデータ比較なのかイマイチよく分からない。グラフはやはり見やすい>分かりやすい、が最重要ポイントです。
高校中退。それは貧困のスパイラルを生んでいるという著者の説。大きくうなづける部分もありながら、果たして自立のために本当に高卒資格が必須なのだろうか?という疑問もやはり否めません。だとしたら今の世の中の方がやっぱりおかしくなったのではないだろうか?知識を得るためではなく生きる術を身に付けるための高校教育とは?
著者は 『進学校と底辺校では同じ高校というくくりでは捉えられないほどその性質が違いすぎる。全く別の種類の学校と言っていい位だ』 と。進学指導(学習)メインと生活指導メイン。それは確かに違いすぎる…そして磨り減っていく底辺校の教師達。それよりも、親も中退、子も中退の家庭が繰り返す貧困スパイラルの現実。学習どころか生活習慣のしつけもできない、というより知らない(!)親達が続出している今、社会は終末期を迎えつつあるのかもしれない。この不公平はどうにもならないものなのか? 『教育が国を救う』 という意見には大いに賛成だが、果たして今のままの体制、教育でいいのだろうか?
最近こういうことを考えれば考えるほど 『生きる力』 とは何なのか、分からなくなってきました。 『生きる力』って自分の力で見つけるものなのですが、現代ではそれすらも皆自力でできなくなっているということかもしれない。それはすなわち 『生きる力』 が育たない現状となっているわけだ。ううう…。
親として、現代社会を生きる1人の社会人として、考えさせられる、考えねばならない課題です。
評価:(5つ満点)