一年待てば楽に死ねる手段を差し上げます。謎の人物からの提案に、自殺を1年先に延ばした孤独な元OLは、時間潰しに児童養護施設のボランティアを始める。もう一つの時間軸ではその一年後、連続毒物自殺事件の真相を記者が追う。無関係と思える人物が次々と毒物で自殺を遂げる、その関連性は。孤独な現代社会に『生きる』意味を問うミステリー。
(本多孝好)1971年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業。『眠りの海』 で小説推理新人賞を受賞。主な著書に 『真夜中の五分前side-A/side-B』 『正義のミカタ』 『Fine days 恋愛小説』 など。
今回も大きな謎が冒頭から出てきて読者を楽しませてくれます。毒物自殺をした女性とその自殺を追う記者、その時間軸は1年ずれている。事件を追う記者と自殺への時間を潰すためにボランティアを始める女性。それぞれは徐々に自殺の時へ迫っていき、そして迎えるラストへの大きな場面転換。今回もお見事としかかいいようがない、読者への裏切りです。
人生に絶望した30代のOL、自分でなくてもできる仕事しかなく、自分を求めている人もおらず、自分がこの世の中にいなくても世の中が全く変わらないことに気づいて愕然とする彼女。自殺を考えた彼女に突然謎のブローカー?が一年後確実に安らかに死ねる方法を渡すと行ってくる。その条件は今から一年だけ生き延びること。その条件を満たすために彼女が始めたボランティア活動に、彼女自身が徐々にハマっていく様子。彼女がハマったのはボランティア活動ではなく、そこにいる人々とつながること、関わることだったのだ。
人は人とつながり、関係を持ち、初めて自分の価値を確認することができる。という物語です。それにしてもこの主人公の30代元OLには、よりみちパンセの
『さびしさの授業』 を読むよう勧めたいな。中学生だって人は孤独だということを知っているぞ。もうちょっと頑張りたまえ、それができるはずだ!
評価:




(5つ満点)
PR