リストラされて失業中の冴えない初老の男、尾津。そんな自分を突然ある若い男が訪ねてきて尾津が世界の命運を握るコンピュータソフト開発の鍵として選ばれたのだと言う。あらゆる諜報機関から極秘データを盗み出して作られたという驚愕のコンピュータソフトとは一体どんなものなのか、そしてそれに自分がどんな係わりがあるというのか。ソフトを狙う各国の諜報機関に追われる身となった尾津の周囲は目まぐるしく変わり始める。生きるか死ぬかの争いに巻き込まれ戦う決意をした尾津の運命は。膨張するインターネット社会がもたらす恐怖と戦慄と、それと戦う男の物語。産経新聞連載を単行本化。
(大沢在昌)1956年名古屋市生まれ。慶応義塾大学法学部中退。『感傷の街角』 で小説推理新人賞を受賞しデビュー。『深夜曲馬団』 で日本冒険小説協会最優秀短編賞、 『新宿鮫』 で日本推理作家協会賞長篇賞、吉川英治文学新人賞、「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞、 『心では重すぎる』 で日本冒険小説協会大賞、『パンドラ・アイランド』 で柴田錬三郎賞を受賞。
なぜ私は大沢作品が好きか?ということを先日、友人に説明しようとして気付きました。
私が大沢作品を好きな理由は、そこに確固たる
ヒロイズムが存在するからなのです。大沢作品には必ず
ヒーローが出てきます、それは決して世間的にはカッコイイ存在ではなく、むしろ社会のはみ出し者のような存在の男(たまに女)達なのですが、彼らは共通して確固たる
『自分の信念』 があり、常にそれに従い行動します。自分の心のみに従い行動する、それが真のヒーローではないでしょうか。
最近の小説には、主人公が結局何が言いたくて何がしたいのか最後まで分からない、というおよそヒーローとは言い難い登場人物ばかりの作品も少なくなく、読了後ガッカリしてしまうことも多々あるのですが、この点でも大沢作品は読者の期待を決して裏切りません。これってとっても大切なことではないでしょうか。
と説明していくうちにまたしても勝手に盛り上がる私(笑)。
今回も現代のファンタジー、皆が血眼になってその存在を確かめようといてるシュミレーションソフト
『ヒミコ』 とは一体どんなものなのか?本当にそれは存在するのか?冴えない60代の失業オヤジである尾津が主人公としてヒーロー振りを発揮していくところもいいですね。
毎回奇想天外な設定で魅せてくれる、大沢先生のインターネット社会への警鐘とも言える本作、たっぷり楽しませてもらいました。
評価:




(5つ満点)
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