王愛勤ことワンちゃんは名前のとおりの働き者。女好きの前夫に愛想をつかし見合いで四国の旦那の元へ嫁いできた。姑の面倒を見ながら独身男たちを中国へ連れて行きお見合いツアーを仕切ることに生きがいを見つけたワンちゃん。文學界新人賞受賞、第138回芥川賞候補作。
(楊逸)ヤン・イー。1964年生まれ。中国ハルビン市出身。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社を経て中国語教師。本作で日本作家としてデビュー。
著者は中国出身ということで母語でない日本語にはところどころ面白い、不思議な表現がある。
『この地を踏んでいても…』 歩いていても、ここにいても、という意味らしい。日本人は日本語ではこのように表現しないが、その表現がおかしいというより新鮮で、主人公である中国人女性ワンちゃんの心情をよく表していると思う。
踏まれても踏まれても、子どもを取られてもなお生き抜こうとするワンちゃんの生命力の強さはどこから来るのだろう。居場所を探し続ける物語。
老処女も同じく居場所を探し続ける物語。こちらはワンちゃんのような現実派とは正反対で、恐ろしいまでの時代錯誤というか勘違いというか…。しかしただの勘違い女として片づけてしまうにはその信念が強すぎてむしろ感心してしまう。
表現力に大きな魅力あり。次回作に大いに期待。
評価:




(5つ満点)
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