施設で育った過去を持つ僕は、刑務官として夫婦を刺殺した20歳の未決死刑囚 山井を担当している。控訴しない山井はまだ語られていない何かを隠している。生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
(中村文則)1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部卒業。 『銃』 で新潮新人賞、『遮光』 で野間文芸新人賞、『土の中の子供』で芥川賞を受賞。
中村文則は
『土の中の子供』 がキツくて読めなかったのだが、やはり今回も辛かった、私には重すぎる。この底のない深さは、
辻仁成 『海峡の光』 を思い起こさせた。人のバックグラウンドは、本当に幼い頃の家庭で築かれるものなのだろうとしみじみ思ってしまう。
主人公の退廃的な思いには底がなく、読んでいて始終辛い。辛いと感じることも忘れようとしているその生き様に本当に悲しくなる。痛みを痛みとして感じていられるうちは、人はまだ幸せなのかもしれない、と思った。
評価:



(5つ満点)
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