近未来の渋谷でしたたかに生き抜くホームレスの少年イオン。彼は家族を持たず信じることを知らない、唯一の家族鉄と銅の兄弟を除いては。ある日鉄と銅が渋谷に現れたことを知ったイオンは彼らを捜し始めるが。読売新聞連載を単行本化。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞、『女神記』 で紫式部文学賞、『ナニカアル』 で島清恋愛文学賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。
待ちに待った桐野氏の新刊。今回はYA向けかな。いやこれはやっぱり大人社会への警鐘か?近未来の渋谷に暮らすホームレス少年イオンを主人公に、ホームレスの少年少女ら、彼らから搾取する大人、複雑化した社会を鋭く描いています。
アンダーグランドと呼ばれる地下鉄の空洞に暮らすホームレスが出てきますが、地下は暗いし寒いし食料もない劣悪な環境であるのに、なぜ彼らはそこを選んだのか。それは不自由な地下であれば、誰もが平等だからだ、というアンダーグランド組のリーダーの理論にはかなりショックを受けました。平等とは、同じ不自由を共有すること、なのでしょうか?それは絶対に、違いますね。
それにも関わらず、その道を選ぶしかない、他に選択肢のない彼らは、その平等をあえて 『選んだ』 。本当にショックです。格差とは、平等とは。イオンらホームレス少年に未来はあるのか。若干続編も出そうな雰囲気のラストに期待してます。
劇画調の表紙、挿画が効いている一冊です、YA(高校生以上)にオススメしてもよいと思います。
評価:




(5つ満点)
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