大学を出たばかりの新任教師、小谷芙美先生は学校では一言も口をきこうとしない1年生、鉄三を受け持つことになった。決して心を開かない鉄三に打ちのめされながらも、鉄三の祖父バクじいさんや同僚の 『教員ヤクザ』 足立先生、そして様々な過程環境で育つ学校の子どもたちとのふれ合いの中、小谷先生自身が鉄三と向き合うことを誓う中で大きく成長していく。戦後30年の昭和70年代。徐々に生活に豊かさが感じられてくる日本社会の中、まだ戦争の爪あとに苦しむ人々が教育現場にも子どもたちの家庭にも残されていた。差別のない社会とは、教育とは何か。親は、教育に関わる全ての者は今何をするべきか。現代にもそしてこれからにも、永遠に通じるテーマを抱えた、子どもに関わる全ての大人に読んで欲しい、教員経験17年の灰谷健次郎のデビュー作。
初めてこの本を読んだのは小学校6年の頃でした。大人になった今改めて読み返してみると、子どもの頃気付かなかったことがとても多いです。
まず70年代という時代設定。教師の中には戦前教育者であった人もまだ多くいて、職員室で若い先生とケンカになり、若い先生に
『教え子を戦場に送ったくせに!』 と言われ激高する、というシーン。子どもの頃は読んでいて全くこんなシーンがあったことにも気付かなかったが、この一言は確かにキツイと思う。でも若い教師にとっては何よりも言わねばならない一言であることも同様に分かるような気がする。今の先生方は職員室でケンカもしないだろうしなぁ(苦笑)。
『教員ヤクザ足立先生』 は子どもの権利のためにハンストまでやる。すごー教師。こんな人ももういないな。
主人公小谷先生の私生活がサラッとしか描かれていないが、小谷先生が教員と言う仕事の素晴しさに目覚めていく一方で夫との溝は深まるばかりで、いずれリコンするんだろうなぁ。
久しぶりに読んだ灰谷健次郎。デビュー作にして最高傑作ではないかと今も思う。
評価:





(5つ満点)
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