直木賞受賞、山手線円内にマンションを買い、再婚までした。恵まれすぎだと人は言う。だが私には。夫婦という葛藤、心と孤独の病、鬱。3年間の闘病と休業後、病んだ心が静かに恢復してゆく様子を日記形式で描く。
(山本文緒)1962年横浜市生まれ。神奈川大学卒業。OL生活を経て 『プレミアム・プールの日々』でコバルト・ノベル大賞の佳作を受賞し少女小説家としてデビュー。『恋愛中毒』 で吉川英治文学新人賞、『プラナリア』で直木賞を受賞。主な著書に 『ブルーもしくはブルー』 『ファースト・プライオリティ』 『パイナップルの彼方』 など。
賛否両論出ていそうな本作ですが、私はこういう形式で3年間の休業を綴り発表した山本氏にまず拍手を送りたいと思います。
確かに山本氏は経済的には恵まれているのかもしれないです、都内の一等地にマンションを持ち、仕事部屋も秘書さんも持ち、更に札幌にも仕事部屋がありそこにも秘書さんがいてくれていつでも好きな時に行ってこられるという。再婚したご主人は出版関係なので作家という職業に理解は深く、別居婚も厭わずその後の同居婚ももちろん厭わず、影となり日向となり寄り添ってくれる。贅沢だ、と言われるとそうかもしれない。
でも。心が病気になるのはこうしたこととは無関係なのです。
本書を読むと、病気になった原因は少なくとも今の夫 『王子』 さんではないと思うのですが、前の結婚生活がやはり関係しているのか、 『王子』 さんとは結婚当初はしばらく別居、という形を取ってます。足繁く自分のマンションに来てくれる 『王子』 が時々うっとおしいと書く山本氏。これが一部の読者の反感を買っているのかもしれないけど、私は素直でいいと思いましたね。
感謝していても、そばにいて欲しい時もあればいて欲しくない時もある。
それを理解しなければ、元々他人同士の結婚なんてうまくいくはずがないんですね。
『リタリン飲んでドーピング。』 という一文が何度も出てきて、笑えないのに笑えました。この本を読んだ後すぐリタリンは抗うつには効果なし、というニュースが流れてきて、ひえーでした。
正直、この本の内容は言わなければ言わなくてもいいことがいっぱい詰まってます。でもそれを敢えて書き、発表した山本氏はやはり職業作家なのだろう、と感じた一冊でした。
評価:(ちなみにうちの王子とは無関係です)