開発保留地区。それは10年前3095人の人間が消え去った場所。だが街は今でも彼らがいるかのように日々を営んでいる。存在しないはずの図書館から借りられる本、ラジオ局に届く失われた人々からのはがき、響き渡る今はもうない鐘の音、席を空けて待ち続けているレストラン。そして開発保留地区行きの幻のバス。失われた時が息づく街を舞台にその痛みから立ち上がる人々を描く。『失われた町』 続編。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。著書に 『バスジャック』 『失われた町』 『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』 。
『失われた町』 続編、前作よりずっとよく出来ています。町の失われる構造についても前作よりずっとよく理解できますね。三崎お得意の不可思議世界観が今回もよく表現できていると感じました、職業としての歩行技師とか、居留地の様子とか。個人的には見えない図書館、第五分館に心惹かれますねやっぱり。
過去と決別し新しい人と出会い、その人と歩むことを決意する人々が多く出てきます、人はやはり強いものなのですね。 『刻まれない明日』 というタイトルもなかなか意味深ですね、どういう意味かな?分断されないってこと?実際には明日への一歩を踏み出す人々の強い意志を描いた物語。前作を読まなくても読めますが、読んでおいた方が三崎氏の織りなす不可思議世界の考え方がより分かり、楽しいです。
評価:(今回も装丁がいい)
さすが
より身近に