僕のなかの北朝鮮は消し去ろうとしてもそう簡単に消し去ることができない。初めて訪れたソウルで見聞きした多くのことが辛苦に満ちた24年の記憶を甦らせる。拉致被害者である著者が明かす北朝鮮での苦労とそれでもなお朝鮮語を武器に翻訳家、作家として生きることを決意した日々を描く。新潮ドキュメント賞受賞作。
(蓮池薫)1957年新潟県生まれ。中央大学法学部3年在学中に拉致され24年間北朝鮮での生活を余儀なくされる。帰国後中央大学に復学。新潟産業大学専任講師。主な著書に 『蓮池流韓国語入門』 『私が見た、「韓国歴史ドラマ」の舞台と今』 など。翻訳書に 『孤将』 始め多数。
まず読み始めてすぐ、蓮池さんは文章が巧い。と思いました。24年間も母国語を使う機会を奪われ、思想、言論、行動すべてを監視されていた身でありながら、この文章力、表現力の豊かさはすごいです。帰国後自分こそが自立して家族を守れねば、そのために自分のできることは何か。と翻訳家、作家の道を選びそしてそれを実現した蓮池氏の力と意志には、本当に感服します。
常に周囲の人々、家族への感謝を忘れず口にする彼の姿勢は本当に謙虚で頭が下がる思いです。決して恨まず、愚痴らず、むしろ爽やかにご自分の人生を受け止めひたすらに翻訳家としての道を模索し努力し続けてきた氏の生き様を感じ取ることができます。韓国文学については全く知識がありませんでしたが、蓮池氏翻訳の本を読んでみたくなりました。
困難な状況にありながらも自身の能力を最大限に活かそうと努力し続ける蓮池氏の生き様、その清々しさに心打たれます。今後の著作にも注目です。
評価:




(5つ満点)
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