北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠。その2時間後、複葉輸送機で500人の特殊部隊が来襲、市中心部を武力制圧した。彼らは 『北朝鮮反乱軍』 を名乗り福岡に新しい国家を建設すると言う。テロを恐れ福岡市を封鎖した日本政府の対応、福岡市民に募る政府への不信感。反乱軍後続部隊12万人が博多港に接近する。恐ろしいまでに冷徹非情で組織化されている北朝鮮反乱軍に対し、立ち上がったのは社会から爪弾きにされていたホームレスの少年達だった。毎日出版文化賞、野間文芸賞受賞。
(村上龍)1952年長崎県生まれ。武蔵野美術大学中退。 『限りなく透明に近いブルー』 で群像新人賞、芥川賞、『コインロッカー・ベイビーズ』 で野間文芸新人賞、 『村上龍映画小説集』 で平林たい子文学賞、『インザ・ミソスープ』 で読売文学賞小説賞、『共生虫』 で谷崎潤一郎賞受賞。主な著書に 『69 sixty nine』 『ラッフルズホテル』 『トパーズ』 『5分後の世界』 『13歳のハローワーク』 など。
久しぶりに読了まで2週間以上かかった本です。それだけすごい量と内容でした。読了後もしばらくサトウの指に書かれていた 『コリョ』 の文字が頭から消えず、頭の中で 『コリョコリョコリョ…』 とリフレイン(笑)。恐るべし、コリョ。
人は集団に属さなければ生きていけないものなのか、集団とは何か?を問う作品ではないでしょうか。仲間、友人、そして国家。全て普段は意識していない集団と、全ての人はつながっており、そこから逃れる術はないという事実。
物語は目まぐるしく多くの登場人物の視点で展開します、一人称が次々と変わる小説の中には視点が捉えきれず煩雑な印象だけを残すものが多い中、本作はさすが村上龍と感じさせる作品でした。それぞれの立場の人物の視点にブレがない、だからこそ他人から見れば 『狂気』 に見えるその人物の意志が直に響いてくる感覚。登場人物の誰にも共感はできないけれども誰に対してもおまえの考えは間違っているとは言い切れない。人の信条、生きるための理念というものは他人が変えることはできないということだろうか。
コリョの兵士達の視点が多く、殺人兵器として育成された彼らもまた、平和な日本に暮らす私達と同じヒトなのだと、そう描いた村上氏。日本と北朝鮮、退廃した資本主義と退廃した共産主義、行き着くところは同じなのか、異なるのか。
この小説の本当に恐ろしいところは、今すぐにも現実として目の前に迫っているということだろう。
年末にすごい本読んじゃったな。
評価:(5つ満点)