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名もなき毒*宮部みゆき

namonakidoku.jpgあらゆる場所に 『毒』 は潜んでいる。人は時として意識せずその毒に侵されてしまうのだ。財閥企業で社内報編集室に勤務する杉村三郎。トラブルを起した女性アルバイトの身元調査で尋ねた私立探偵の事務所で、世間を騒がしている連続無差別毒殺事件の被害者の遺族に出会う。そこから一連の事件に巻き込まれていく。現代ミステリー 『誰か』 の続編。地方新聞各紙連載に加筆修正、最終章書き下ろし。第41回吉川英治文学賞受賞。
(宮部みゆき)1960年東京都生まれ。『我らが隣人の犯罪』 でオール読物推理新人賞を受賞し作家デビュー。 『龍は眠る』 で日本推理作家協会賞、 『理由』 で直木賞受賞、本作で吉川英治文学賞。

見事な作品。多くのエピソードを盛り込みながらその全てにムダがない。最近ムダな記述が多い小説が多かったので改めて宮部みゆきの手腕には驚くばかりです。
最初から文章がすんなりと自分に入り込んでくる、しつこくもなくかといってサラッとしすぎていて忘れてしまうことはない。むしろしつこいほど主人公杉浦三郎の心情を綴っているのにもかかわらず、全くしつこさを感じない。宮部文学の真骨頂です、やはり宮部は刑事物が一番だと思います。

本作は 『誰か』 に続く杉浦三郎シリーズ。三郎自身は非常に平凡な普通のサラリーマンとして描かれているが、その彼が殺人事件の探偵役となれるのも実は非常に観察眼が鋭く洞察力があるためだと思われますが、それを読者に印象付けない描き方をしています。

評価:(必読!)

物語には何種類かの 『毒』 が登場します、殺人に使われる青酸カリ、シックハウス症候群を引き起こすアレルゲン、そして人の精神に巣食う毒。多くの毒が生活のすぐそばに存在し、平穏な家庭へ入り込む恐怖を今回三郎は人事ではなく実際に体験してしまいます。

それでもその毒に対して怒りをぶつけるだけではなく、こうした毒は現実に存在すること、そしてそれらから逃れること、全く関わりを持たずにいることは不可能なのだと自覚するところ、三郎はそこがスゴイ。 『誰か』 と比べても本作では三郎の心情はかなり細かく描写されています。

会長の娘婿という身分、娘にお受験をさせなくてはならないことに対する小さな葛藤、それに付随する豪華な一戸建ての購入とリフォーム、全ての決定権と費用は妻にある事実。単に羨ましいとは言えない葛藤が三郎の中に常に存在することは言うまでもありません。でも三郎はその複雑な心境を妻にぶつけることはなく、いつも自分1人の中で処理をし続けています、辛い人生であることは想像に難くありません。

この家庭環境も三郎にとっては一種の 『毒』 なのではないでしょうか?実姉のセリフ 『いつかそんな生活は続かなくなるよ』 という言葉を常に反芻する三郎、いつかはこの重圧が彼を押しつぶしてしまうのではないでしょうか。

冒頭に登場する黒田次長の娘の喘息症状、あおぞら編集部のアルバイト原田いずみの狂気、そして連続無差別殺人事件と多くのエピソードはそれぞれ無関係のようでありながら全てが三郎の生活に大きく影響を与えていた事実。最後までムダな記述が全くありません。
また途中途中で登場人物達の動きに含みを持たせて 『この人怪しいかも?』 と思わせる手法はやはり秀逸です、ミステリーとして完璧な仕上がり。

杉村三郎シリーズ、次回作も期待大、です。

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