愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。幼い娘を不慮の事故で亡くした中学校教師。終業式のHRで彼女が語った事故の真相とは、彼女が犯人に下した断罪は。終始女性教師の独白で綴るクライムノベル。第29回小説推理新人賞受賞。
(湊かなえ)1973年広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒業。BS-i新人脚本賞佳作、創作ラジオドラマ大賞受賞を経て本作で小説推理新人賞を受賞しデビュー。
『聖職者』 衝撃である。小説としてもやりすぎだろうか?いや何よりも恐ろしいものは人の
『悪意』 で、その悪意が引き起こす事件は本当に想像がつかないものなのだ。
第一章の聖職者だけで独立した物語だが、あえてその続きを連作短編集にした本作品、そのチャレンジがすごい。ここまで完成されている作品に続編を書くと、ほとんどが蛇足で終わってしまうはずなのに本作がそうはならないのは、切り口のうまさとその展開の巧みさ。語り手を各章でそれぞれ異なる立場の者に置き換え、更に大ドンデンと言える展開を用意している。この大ドンデンのすごさはもう既に薬丸岳クラスの上、社会現象への関心の高さは桐野夏生クラス。難しい少年事件を題材にし、当事者である少年の心の闇を少年の立場から描くことに見事に成功した。
【成功】と
【失敗】この言葉も多く出てくる。現代社会は
【成功すること】だけが本当に求められているのだろうか?教育とは、成功者を多く作り出し失敗作の子ども達を排除すること、なのだろうか?学校そして家庭という子どもを育てはぐくむ場に身を置く者として、厳しい警鐘と感じた。
とにかくスゴイ一冊、必読です。
評価:





(衝撃作!)
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