あの頃自分は死んでいた。心を殺して噓をつき続けていた。大阪ミナミの繁華街。キャバレーの呼び込みにまで落ちぶれた吉田、OL生活から雇われママになったみさを、そしてゲイバーのママ ミミィ。夜の街に棲息する彼らの懸命で不恰好な生き様を描く。『オール讀物』 掲載の2編を単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』 『さくら』 『うつくしい人』 『きりこについて』 『漁港の肉子ちゃん』 など。
(収録作品)地下の鳩/タイムカプセル
地下の鳩
大阪ミナミの繁華街で呼び込みとして働く吉田も、雇われママのみさをも、どうしようもない境遇にあるからこそ惹かれあうのだろうか?愛情とは何か、に鋭く迫る秀作です。たまにこういう切れ味鋭いナイフのような小説を読みたくなりますね。
タイムカプセル
そしてこの地下の鳩のスピンオフとしての続編、タイムカプセル。こちらの秀逸さ、ぜひ読んでください。ミミィはお世辞にも美しいとはいえないゲイバーのママ。でも客を大事にしホステス達を大事にし、店を大切に守ってきた。いつもは常連が多い店に、ある日突然イケメンの二人組がやってくる。この二人が来た途端なぜか常連客の一人がピタリと店に来なくなって…。
心優しいミミィの持つ悲しい過去、そして同じく心優しいミミィの周りの人々の持つ悲しい過去。
『子どもの頃にいじめられた人は、一生その傷を背負っていかないとならないのでしょうか。』 というホステスの言葉が、深く深く心に残ります。
評価:





(大阪で生まれた女やさかい~♪)
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