政財界から 『神』 と崇め奉られる私達の父。父の妻の一人に焦がれる息子。互いに惹かれあう異母姉弟。やがて姉は両家の子女だけが通う 『あの学校』 へと家を出される。不可思議な 『あの学校』 の存在に気付いた一人のジャーナリストが、外の世界と隔絶された 『神の子ども達』 を救うことになるのか。『雨の塔』 続編、『RENZABURO』 連載を単行本化。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 主な著書に 『白蝶花』 『セレモニー黒真珠』 『群青』 など。
(収録作品)野薔薇/すみれ/ウツボカズラ/太陽の庭/聖母
イマイチ設定が理解しにくかった前作 『雨の塔』 に比べ、今回は分かりやすくできてます。この物語が秀逸なのは、全ての章を権力側(永代院)の視点のみとせず、庶民側(ジャーナリスト)の視点を入れた章(太陽の庭)があること。この章のおかげでコインの表裏がよく分かり、社会のというか世界の仕組みまでよく見通せたような気がします。永代院という狭い社会に生きてきた葵、泉水らは果たして広い外の世界と相容れることができるのだろうか?
雨の塔のある大学が 『Google mapでグレーに塗りつぶされている』 なんてあたり、恐怖心の煽り方がうまいですね。世間から権力者、と崇められていた永代院の人々ではありますが、その社会はあまりにも狭すぎて、しきたりに囚われすぎていて身動きが取れない。やはり幸せとは、選択肢のあること、なんですね。
でも何となく憧れてしまう、【特権階級】という響き。そこがやっぱり私も庶民なんだな(笑)。
評価:(5つ満点)