海蛇の島の大巫女の家系に育ったカミクゥとナミマの姉妹。姉は生命を司る昼の巫女、妹は死を司る夜の巫女となる運命だった。ナミマは掟を破り恋人と島を抜けるがやがて命を落とし、女王イザナミが司る黄泉の国に落ちる。自分の死の真相を知りたいナミマは黄泉の国で蜂となり現世に戻るが、そこでナミマが目にしたものとは。古事記をモチーフにした 『新・世界の神話シリーズ』 の一冊、世界20カ国で翻訳/発売予定。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。
読み始めるまではあまり気が進まなかった本書ですが、読み始めた途端一気に読んでしまいました…久々にご飯の支度しながら立ち読みしましたよ(笑)。
古事記のイザナキ・イザナミのエピソードをナミマという架空の島の巫女を語り部にして脚色し、見事なストーリーに仕上げた桐野氏はやはりさすが。イザナミから見れば、彼女を捨てた非情な夫イザナキが彼自身の持つ永遠の命、すなわち
『死ねない運命』 という宿命に苦しむ姿を描いたのも、見事です。
イザナキ・イザナミがそれぞれ陰と陽を表すように、島の昼の巫女であるカミクゥと夜の巫女であるナミマを作り上げ、それぞれの悲しい運命とその運命から最後まで逃れられない苦しみを、見事に神話の世界と連動させています。新・世界の神話、面白い試みです。
評価:




(5つ満点)
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