廃墟が都市機能を担う重要なものと認められた社会。廃墟建築士の関川はかつての弟子が強引な手法で次々と高級廃墟を建て業界の寵児となる中、地道に廃墟を作り続けていた。そんな中廃墟建築業界全体を揺るがす事件が発覚する。表題作ほか 『建物』 で起こる奇妙な事件を題材に、現実と非現実が同居する三崎ワールド短編集。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。著書に 『バスジャック』 『失われた町』『鼓笛隊の襲来』。
(収録作品)七階闘争/廃墟建築士/図書館/蔵守
『七階闘争』 でまた鼓笛隊の襲来の二の舞か…と残念に思ったところで続く 『廃墟建築士』 で盛り返してきた。コレはいいです。現代社会における 『廃墟』 のコンセプトがしっかり伝わってきます。
『図書館』 は短編 『動物園』 (バスジャック収録) の続編。図書館の本来の 『野生の』 姿、という抽象的なとらえ方、表現が面白い。確かに 『知識』 とは生きているものなのかもしれない。
『蔵守』 も奇抜な話ではあるが、愚直なまでに蔵を守り抜こうとする蔵守と彼に従う見習いの、未来へつながるラストが明るい。
前作 『鼓笛隊の襲来』 でかなり外したとガッカリしていたのだが本作を見る限りまだまだ大丈夫。 『バスジャック』 の二階扉、動物園、『鼓笛隊の襲来』 の覆面など、ちょっぴり連作っぽくしているのもファンサービスとしていいです。
評価:(5つ満点)