35歳独身の真里はアパートの階段から落ちたのをきっかけに、40歳までに結婚すると決意する。しかしそれは本当に自分がしたいことなのだろうか。自分の人生を真剣に考えた結果、真里が出した結論は自分で家を建てることだった。反対する家族、親族を巻き込み 『家を建てる』 ことの本当の意味を考える。 『群像』 掲載を単行本化。
(中島たい子)1969年東京都生まれ。多摩美術大学卒業。『チキチキバンバン』 で日本テレビシナリオ登竜門の大賞を受賞。『宇宙のペン』 で城戸賞準入選をはたし、以後映画製作等に携わる。 『漢方小説』 ですばる文学賞を受賞。
(収録作品)建てて、いい?/彼の宅急便
『建てて、いい?』 は

×4ですが、同時収録短編
『彼の宅急便』 は久々に短編では

×5の、おおっ!と言わせる作品でした。
『建てて…』 はテンポもよく概ねいいのですが、不要な伏線というか意味のない伏線があることがややマイナスポイントですね。自分の居場所を作りたい、という真里の心情をもっと全面に打ち出して欲しかったです。あとは場面転回、回想の挿入が何箇所か違和感を感じるところがあり、小説としては
『漢方小説』 の方がまとまっていた感がありました。
これに対して
『彼の宅急便』 は色々思い悩む主人公の心情をつらつらと綴っていき、ラスト、彼からの宅急便に同封されていたたった一行の手紙で大ドンデン!爆笑!という展開が見事でした。オーソドックスな形式かもしれないけど、短編の面白さはこういう展開にあるなと久々に思いました。むしろこちらの方が必読。
評価:




(5つ満点)
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