少子高齢化、単身/未婚化、農業、雇用、医療、教育、社会保障、エネルギー資源、そしてコミュニティ。これからの日本はどうなるのか。ジャーナリスト池上彰がこの国の今と未来を数字を通じて見る。『世界がもし100人の村だったら』 日本版。巻末に同書の翻訳家 池田香代子氏との対談を収録。
(池上彰)1950年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業。NHK報道記者、週刊こどもニュースのお父さん役を経てフリージャーナリスト。主な著書に 『そうだったのか!現代史』 『伝える力』 『14歳からのお金の話』 など。
数値のソースがあとがきにきちんと記載してあるところが、さすがジャーナリスト池上さん。決して流行に乗って書いただけの本ではないことが分かります。あとがきの対談も興味深いですね。
100人の村だったら*****は**人、という表現は大変分かりやすいです。イラストも可愛くて手に取りたくなる装丁、でも中身はシビア。教育も医療も世界最高水準なのに貧困層が拡大しつつある現代日本。学校の諸経費の支払いが困難なのは小学生100人のうち14人、10年前は7人だったのに。100人の若者のうち失業中の若者の割合が増えている、
『正社員のイス』 取りゲームにならない社会を、と池上さんもあとがきで述べています。そう、人を押しのけてまで座らなくてはならない、イス取りゲームをする必要のない社会にするには、どうしたらいいのでしょうか。
まずは知ること、でしょう。自分と家族、周りの人々が困ることなく幸せに快適に暮らすためには何が必要なのか、数の少ないイスを取るために人を蹴落としていないか。人を蹴落としてまで座ったそのイスは、自分が本当に欲しかったものなのか。不要な情報に惑わされず、本当に幸せに生きるために必要なモノ、人を見極められる人になりたいものです。
様々な数値から見えるこの村(日本)の厳しい現実を目の当たりにしても、それでもこの村をより良い村にして行くのは、これからを生きていく私達なのだ。というラストのメッセージが真っ直ぐに届きます。アインシュタインやマザーテレサの言葉を引用するなど著者の池上さんらしさが感じられるのもいいですね。小学校高学年から中高生にはこの本を参考に自分の考える【100人村数値】を出してみる、というのもいい勉強になるかもしれません(いやそれは大人にとってもいい勉強?)。
評価:




(5つ満点)
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