幼なじみの梁浩遠と謝志強は1988年中国の名門大学に入学する。2人は大学で民主化運動の渦に巻き込まれ、1989年ついに天安門広場に行き着く。理想を求めて更新した日々と隔離してゆく思想、運動で挫折を味わい大学を退学させられた2人はそれぞれの道を歩み始める。浩遠は結婚して日本に渡りその後も同胞と民主化運動を続けてきた。浩遠の目から北京オリンピック前夜までの民主化運動の道程を天安門事件を中心に振り返る。第139回芥川賞受賞。
(楊逸)ヤン・イー。1964年中国ハルビン市生まれ。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社を経て中国語教師。本作で芥川賞受賞。著書に 『ワンちゃん』。
天安門事件について少しでも理解できるだろうかと期待を持って読んだが、そこはやはり分からなかった…。民主化運動とは結局何だったのだろう。運動に参加していた当事者の浩遠ですら分からなかったことが、読者にも分かるはずはないのだった…ということだろうか?
日本に渡ってからの浩遠にも色々と辛いことはあったはずだが、あえてそこに焦点を当てずに、日本でも同胞を集めひたすらに民主化運動に固執続ける浩遠を描ききった、と言えるが…やはり前作 『ワンちゃん』 ほど感情移入はできなかった。
日本という豊かな異国で、家族を築き上げ自分の仕事をし生計を立てていてもなお、浩遠の心の中に巣くう孤独感の正体とは、一体何なのだろうか。浩遠はいつまでその孤独と戦い続けなければならないのだろうか。
評価:



(5つ満点)
PR