誰もが羨む瀟洒な生活を送る結婚12年目の恭子と瀬野。だが夫の海外出張中にかかってきた愛人と名乗る女からの電話が恭子を殺人者へと変えていく。計画通り犯行に及んだ恭子だったが次第に膨らむ疑念。私が殺したのは本当に夫の愛人だったのだろうか?自らが殺めた女について探るうちに自分に仕掛けられた罠の存在に気付く。恭子を疑うベテラン刑事 戸田との攻防も絡め、恭子は次第に取り返しのつかない渦の中へ引き込まれていく。初出は2006年幻冬舎ルネッサンスより個人出版(自費出版)。2008年秋テレビ朝日にてドラマ化。
(天野節子)1946年千葉県生まれ。元幼稚園教諭。知育教材開発者。還暦の節目に自費出版した本書がベストセラーに。
本作は当初自費出版だったそうです。その前にもいくつかの文学賞に応募した作品だそうですが…他作がよほど出来が良かったとか?これで文学賞に落ちるならやっぱり相当頑張らないと作家になんてなれないのねぇ。というほど破綻のない作品。自費出版後人気が出て本家幻冬舎から再出版、更にドラマ化までされたのに、著者本人はプロ作家になるつもりはない、と公言しているそうです。どんどん書けば売れそうなのに安売りせず、カッコいい。
トリックの凄さよりも人という生き物の執念、それが本作のテーマ。人の人たる所以はやはり、そのプライドだろうか?人を陥れてまで愛を貫こうとする瀬野とかつての恋人 和歌子、対する欲しいものは何でも手に入れてきた恭子。それでもなお満たされることのない彼ら。恵まれていることは実は、悲しいことなのかもしれない。
評価:




(5つ満点)
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