レトロな下宿に暮らす奇妙な人々。青春と恋の始まりのはずだったのに。真綿荘に集う人々の恋はどこかいびつで滑稽で切ない。不器用な恋人達、不道徳な純愛など様々な愛情の形を描く。『別冊文藝春秋』 掲載を単行本化。
(島本理生)1983年東京生まれ。立教大学文学部中退。『シルエット』 で第44回群像新人文学賞優秀作、『リトル・バイ・リトル』 で第25回野間文芸新人賞を受賞。主な著書に 『生まれる森』 『ナラタージュ』 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』 など。
(収録作品)青少年のための手引き/清潔な視線/シスター/海へむかう魚たち/押し入れの傍観者/真綿荘の恋人
正直2章を読み終わって、何で今更島本氏がこんな群像劇を書くんだろう?と思ってしまいました。ありふれた、自信過剰な大学生になりたての少年と、ありふれた女性しか愛せない、それもうまく愛せない20代後半の女と、何も島本氏が書かなくても?
段々に一癖も二癖もある住人らのバックボーンが見えてきて、人と人との関わり合いのありようについて書きたかったのだと分かりますが…正直押し入れ → 真綿荘の展開は、唐突過ぎやしないか?むしろ複雑な千鶴の背景を最初から丁寧に綴った方が良かったのでは?と感じてしまいました。
瀬名さんと千鶴の複雑な愛情がラストまでイマイチ伝わらない。大和くんの成長もくじらちゃんの成長もかなり加速度が付いていてちょっと納得できない。連作なのにつながっていないというか、私の読みが浅いのでしょうが。人物らに愛情もあまり感じられず、読後感が悪くないだけに何かもう一つパンチが欲しかった気がしてもったいないような気ばかりしてしまいます。
もう1回読めば違うかもしれません。
評価:(5つ満点)