大手証券会社勤務からホームレスに転落した男。段ボールハウスの設置場所を求めて辿りついた公園で出会ったのは、怪しい辻占い師と若い美形のホームレス。世間の端に追いやられた3人が手を組み、究極の逆襲が始まった。3人が立ち上げた新興宗教は設計図どおりに順調に発展する。ホームレス生活からの劇的な生還、だが不協和音が響き始め…。
(荻原浩)1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業。『オロロ畑でつかまえて』 小説すばる新人賞、『明日の記憶』 で山本周五郎賞を受賞。主な著書に 『押入れのちよ』 『愛しの座敷わらし』 など。
自分が作ったはずの宗教に、周囲が皆夢中になっていく。真実ではないものが真実になってしまった時。某宗教団体を彷彿とさせる内容は、怖いです。
木島が宗教団体 『大地の会』 の仕組みを考え、仲村を教祖に仕立て、文才のある龍斉に教義と出版本を執筆させ…と大地の会が徐々に 『成功』 していくさまは本当に見事で面白い。しかし自分が創設した大地の会にやがて追われることになる木島の転落ぶりもまた、衝撃的である。彼自身が自覚し切れていない幼い頃からのトラウマを、元妻の視点を借りて読者に伝えるところも巧いです。
今現在も、この本と同じことが起こっていそうで、明日は我が身かもしれない、と思わせるそのリアリティが怖いです。
評価:(5つ満点)