『彼』 の一体何を知っていると言うのか?『私』 のことさえよく分からないのに。心に闇を抱えつつ世界は今日も朝を迎える。男女と親子の営みを描くミステリ+心理小説+現代小説という新しい形の連作短編集。『小説新潮』連載を単行本化。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『しをんのしおり』 『光』 『三四郎はそれから門を出た』 など。
非常に面白い趣向。ラストまで 『彼』 こと村川は一切登場せず、彼が一体どんな人物であったのかもイマイチ掴めない。読了直後それが不満だったが、後から考えるとそれでいいのかもしれない。村川を知ることが目的なのではなく、村川にかかわった人々の様相を知るのが目的なのだから。結局村川は皆にとってどんな存在だったのだろう…憎まれて恨まれて、それでも無視できない存在。それも愛情のひとつだということだろう。
三浦しをんのオタクぶり(?)が分かる、マニアックな物語。
評価:(5つ満点)