沖縄の離島で出会った若い2人。短い結婚生活で生まれた一人娘の凉子にとって、島は世界のすべてだった。涼子は成長し幼なじみの漁師 一也と愛し合うようになるが、ある日一也が事故で海から帰らぬ人となる。世界のすべてであった一也を突然奪われた凉子は心を病み、仕事で島を訪れる見知らぬ男たちに夜な夜な抱かれるようになる。美しい沖縄の海を背景に、絶望からの心の再生を描いた物語。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 著書に 『白蝶花』 『雨の塔』。
(収録作品)紺碧/三原色/群青
宮木あや子は泣ける。が後味のよい泣きなので毎回スッキリします。
こういう展開のストーリーは王道と言えば王道ですが、今こういう王道を書ける人が少ないような気がします。
私としては由紀子が主人公の 『紺碧』 が一番好きかな。この本は映画のためのノベライズということでところどころ映像表現を意識している所が多いというか、映像ならばもっと素晴らしいだろうと感じる所がありました。
生まれ育った島という狭い世界が涼子にとっては全世界であったのに、そこから出て行こうとするラストが爽やかだと思うのです。もちろん宮木お得意のエロスもところどころ散りばめられてはいるものの、どの宮木作品にも言えることですが筋が通っている小説のためエロスの部分が目立ってしまうことが決してないのが大きな特徴です。
そこがやはり今回も、脱帽です。
評価:(5つ満点)