団地の奥から用水路をたどるとそこは異界の入口だった。異界に魅入られてゆく友人を救おうと奔走する雄也はやがてこの地が不思議な力を持つ地だと知る。異界と不思議な因縁を持つ美奥を舞台に過去から現代へ紡がれてゆくすぐそばにある異世界の物語。
(恒川光太郎)1973年東京都生まれ。沖縄県在住。 『夜市』 で第12回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。主な著書に 『雷の季節の終わりに』 『秋の牢獄』 など。
(収録作品)けものはら/屋根猩猩/くさのゆめがたり/天化の宿/朝の朧町
今回も恒川ワールドは健在。美奥になぜ不思議な現象が起こるのか、その歴史を紐解く連作短編集。今回も私達の暮らす世界のすぐ裏、すぐそばにある異世界の物語。そもそも魑魅魍魎は異世界のものではなく、元々私達と同じもの、むしろ私達の中から生み出されたものなのではないだろうか?
『朝の朧町』 で出現する町は幻ではなく、むしろ私達が見ているこの世界が幻なのかもしれない。
今回はちょっと複雑な展開で、それぞれの短編に出てくる登場人物達が微妙にリンクしているところが楽しくもありちょっとややこしくもあり。美奥の成り立ちについてもやや謎が多すぎるのでもう少し美奥の秘密に迫った展開にして欲しかったけど、むしろ謎なことはやっぱり謎なのだから、それでいいのかもしれない。などとブツブツ思ったりしました。私は
『屋根猩猩』 が一番好きです。
今回も色濃い民俗学的雰囲気に大満足です。
評価:




(5つ満点)
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