愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は心神喪失で罪に問われなかった。運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚する。事件から4年後、突然元妻から連絡があった。不起訴処分となった通り魔犯人と街で遭遇したと言うのだ。過去からの苦しみに苛まれ不可解な言動を強めていく元妻。彼女が見たのは本当にあいつなのだろうか。元夫の下した決断は。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で第51回江戸川乱歩賞受賞しデビュー。著書に 『闇の底』。
またしても薬丸岳お得意の大ドンデン。そう来たか!としか言えない見事な展開。
伏線の方にも大きな仕掛けがあり、相乗効果が見事。すっかり犯罪被害者をテーマにした社会派小説の顔が板についてしまった薬丸氏ですが、今回のテーマも重いです。
前半から中盤へと続く元妻 佐和子の病状悪化の様子。心身膠着状態でありながら執念とも言える気迫で迫ってくる、彼女に引きずられるように通り魔犯人を探し始め、そしてついに。訴えたいテーマを明確にしつつ、エンタメ性も軽視しない薬丸作風は1つの表現として素晴らしいと思います。
今回は夫婦愛についても考えさせられました。
評価:




(5つ満点)
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