同居の認知症の母親とその母親を邪険にする妻、反抗期の中学生の息子。家庭内に居場所のない平凡なサラリーマン前原に、ある夕方珍しく妻から早く帰って来て欲しいと電話があった。訝しく思いながらも家に帰ってきた前原は、自宅の庭に少女の死体を発見する。事態をどう収拾するか。前原と妻が下した決断とは。敏腕刑事 加賀恭一郎シリーズ最新作。平行して描かれる加賀の家族との対比が痛々しい、家族の在り方を問う物語。
(東野圭吾)1958年大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。『放課後』 で江戸川乱歩賞、『秘密』 で日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。著書に 『幻夜』 『白夜行』 『片思い』 『トキオ』 『ゲームの名は誘拐』 など。
また一日で読んでしまった…どうして東野作品は早く読めちゃうのだろう。加賀刑事シリーズは実は初めて読んだのですが、なかなかいい男のようだ。というかイイ男過ぎる?これから読んでみようと思います。
本作には2組の家族が出てきます。刑事 松宮の家族と、殺人を犯してしまった前原の家族。同じ
『家族』 という言葉で括るには、あまりにも違うその有り様。前原は、常にどこで自分の人生は間違ってきたのか、と自分自身に問い続けながらも、誤った方向へと進んで行くが、最後に母親との思いでから自分の道を取り戻す。
だが前原の中学生の息子は果たして取り戻せるのだろうか…という寂寥感が残る。
最近読む本はどれも
『家族』 をテーマにしているものが多いような…そういう世の中の風潮なのか、私の選書が偏っているのか?(笑)家族とは、成功も失敗もなく、今現在を作って行かなくてはならないものだと言うことを言いたいのかもしれない、と思ったりしました(って反省?)。
東野作品にしては今回の仕掛けはそれほど凝ってはいないのですが、今回はミステリではなく
『家族小説』 であることを思えば、なかなか凝らした趣向だと思います。
前原家だけを描いてはあまりにもゲッソリしてしまうので、ここに加賀刑事と従兄弟の松宮刑事の家族を絡めた辺りはやっぱり上手いかな。ラストもイケてます、最近読む東野作品のラストはみんな結構イケてるっ。それにしても加賀刑事…頭キレ過ぎでは?凄すぎるけど。
装丁も凝ってます、手が盛り上がっているように見えてちょっと恐いです。
評価:




(5つ満点)
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