警察庁キャリアの竜崎は生真面目過ぎて同僚のみならず家族からも変人扱いされている。警察組織を揺るがす大事件に直面した竜崎は、組織をそして自らを守るために決断を下す。霞ヶ関の本庁舎で組織に逆らい孤立無援の闘いに挑む彼に未来はあるのか。吉川英治文学新人賞受賞。
(今野敏)1955年北海道生まれ。上智大学卒業。『怪物が街にやってくる』 で問題小説新人賞を受賞しデビュー。『隠蔽捜査』 で吉川英治文学新人賞、『果断 隠蔽捜査2』 で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。TBSドラマ 『ハンチョウ~神南署安積班~』 の原作シリーズなど著書多数。
今野敏のハードボイルドは、私好みです。今年の課題作家 今野敏はまずこちらから。
偏屈で頑なな警察庁官僚の竜崎。浪人中の息子が現役で有名私大に受かったのに
『東大以外は大学じゃない』 と東大入学を強要したりして家族からも変人扱いされている彼を、好きになれるだろうか…と読み始めたのも一瞬で、みるみる引き込まれてしまいました。表向きは強くありたい、他人にもそう見せたいと常に思い努力している竜崎の、同期キャリアである伊丹への強すぎるコンプレックスがまたいいですね。そのコンプレックスというのは小学校時代に彼から受けたいじめが原因…というのがまたいい(笑)。三つ子の魂百まで、か?
真実を隠そうとする警察組織に真っ向からたった一人で立ち向かおうとする竜崎。それは正義感というより彼自身の生きるための信念とでも言うべきものか。妻には家を守れ、俺は国家公務員として国を守る、と言い切る竜崎。その滑稽とも言えるまでに無骨な信念を持ち、不器用でただ実直な憎めないヒーロー。
続編もこれから読むのが楽しみです。正統派ヒロイズムが好きな私にピッタリの作家が見つかって嬉しいです。
評価:





(5つ満点)
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