商社員の夫と共に赴任した中国、雲南省。通訳として雇った美しい少数民族出身の娘は私と結婚したいと言い出した。少数民族の風習に則り結婚した私達は、夫と3人で一つ家に暮らし始めるが…。女性同士の結婚がもたらす人間関係の微妙な揺れ、中国の奥地に今も息づく、四千年の歴史を持つ茶葉の味わいを描く。
(村田喜代子)1945年福岡県生まれ。『鍋の中』 で芥川賞、『白い山』 で女流文学賞、『真夜中の自転車』 で平林たい子賞受賞。主な著書に 『花野』 『蕨野行』 『十二のトイレ』 など。
久々に小説らしい小説だった。数奇な運命を通して夫婦、人と人のつながりを描いた作品。中国の少数民族の風習も知ることができ大変興味深い。夫婦とは何か、夫と妻の考え方とはここまで違うのか、と考えさせられる。
少数民族の風習にのっとり
『妻』 を娶った敦子が、帰国する際に妻である英姫を連れて行きたがった気持ちはよく分かる、敦子にとって既に英姫は
『自分の一部』 になってしまっていたのだ。妻は自分の一部…こういう考え方は夫(男性)的なのか、妻(女性)的なのか、それも考えさせられる。
しかしこうした女が妻を娶る、という奇妙な風習はやはり中国、雲南という秘境の地であってこそ成り立つ関係であり、英姫の取った行動も敦子の諦めも当然仕方のないことなのだろう。
構成も見事。物語は初老の敦子が昔を回想することで語られているが、雲南での暮らしを思い出すきっかけとなったのも、敦子のボランティア先で出会った講師の男性が語った、彼の夢に出てきたという異国の家族の話という箇所。男性は夢の中のことであったのに生々しく、忘れられないのだと言う。
同様にして敦子にとっても雲南での暮らし、英姫との結婚生活は夢のようであったのだが、現実であったのだ。それが美しくも儚くも、悲しくもある。
評価:





(必読!)
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