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雷の季節の終わりに*恒川光太郎

kaminarino.jpg地図に載っていない、誰も知らない地 穏。両親のいない賢也はそこで育った。穏には春夏秋冬の四季の他に、冬と春の間に 『雷季』 と呼ばれる季節がある。神の季節である雷季には、何が起こっても不思議ではないのだ。古い因習を守る、結束の固い穏の中で暮らしながら賢也は幼い頃雷の季節にいなくなった姉を密かに探し続けていた。夜中に外出を繰り返していくうちに闇番と知り合い、彼から穏の風習を教わるうちに、穏の外の世界への好奇心は押さえきれなくなる。やがて賢也に悲劇が訪れ、穏を追われる身となった彼が目指した地は…。書き下ろし。
(恒川光太郎)1973年東京都生まれ。沖縄県在住。 『夜市』 で第12回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。


またしても恒川光太郎の秀作。素晴らしい作品。プロローグの出だしがいい。
『私の知る限り、穏は一般の書物にはその名を記されていないし、地図にも載っていない。』
異世界である穏。果たしてどんな地なのか?読者の想像を膨らませ、やがて雷季と呼ばれる季節の秘密を知ることとなる。

狭い共同体で子どもがその庇護を受けずに生き抜くことは難しい。賢也はそのことを本能で知りながらも、いなくなったたった1人の肉親である姉を捜し求め、やがて穏の秘密にも触れていこうとする。単なる好奇心からか、それとも賢也自身の持つ特別な 『能力』 のためか。

評価:(5つ満点)

その素直さゆえに闇番は賢也に穏の秘密を教え、やがて穏を追われる身となる賢也の命を助けようとする。始めは賢也を疎ましいと思っていた闇番の心の移り変わりゆく様も、穏を出た賢也が始めて目にする外の世界も、何もかもが賢也と同じく新鮮だ。穏を異世界、異次元の世界として描きながらその位置付けをハッキリさせている本作は破綻がなく、素晴らしい。

一人称が賢也から茜、そしてトバムネキと章により変わるのも、全て 『風わいわい』 を介していることから自然の流れでありとても分かりやすい。 『風わいわい』 の存在が物語では大きな核であり、全ての事象、世界の成り立ちまでを理解させてくれる存在となっている。
その世界観の描き方も秀逸。現実社会は穏のある異次元から見ると巨大なボウルの上に浮いているように見える、そこへの入り口は、日本の場合は神社の鳥居だった。振り返っても鳥居の向こう側に異次元はもう見えない。

何より今回も作品全体に流れる民族的色合いが心地よい作品だった。意味不明な妖怪物ではなく、私達の生活のすぐ隣にこうした森羅万象が存在していることを気付かせてくれる、そんな作品だと思う。
読んでいて心地よい。そんな作品にこれからも出会いたい、そう強く思わせてくれるのが恒川作品。
次回作に、ますます期待。

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Comment

読む前なので

  • 小琴
  • 2007-04-11 17:12
  • edit
まだ 手にもしていないので
AKMさんの
このページのメッセージは読まずに
飛ばしました。

お楽しみは先にとっとこ。



早く読んで下さいね♪

  • AKM
  • 2007-04-12 13:43
  • edit
すみませんいつも記事ネタバレで…。
本作 『強力』 オススメ作品です、
すぐ読めますのでぜひ。
感想お待ちしております。

無題

  • 小琴
  • 2007-06-28 09:52
  • edit
ようやく
予約をして

手元にあります。

まだ わずかに読みかけただけやけど
既に
手ごたえありって感じです。

読み終えたら
AKMさんの
このページのメッセージを
読みにきますね!。

ファンタジー

  • AKM
  • 2007-06-30 10:33
  • edit
お手元に届いてよかったです。
本作は 『夜市』 よりもさらにファンタジー色が濃いです、
どうぞご堪能ください。

次回作が楽しみだな~

無題

  • 小琴
  • 2007-07-05 21:15
  • edit
読み終えました。

先ず、
出だしが 見事!



AKMさんのおっしゃるとおり
“読んでいて心地よい”作品でしたね。

賢也くん、好感持てます!


単純な私は

読みながら

時々見かける(TV)
時代も不明の ちょっと不思議なアニメ

を 思い浮かべてました。



同じく
次の作品に期待です。





これからも

  • AKM
  • 2007-07-08 16:22
  • edit
無事読了されて良かったです。
恒川光太郎、これからも楽しみですね。
若い作家さんもなかなかですよね。

確かにこの難しい世界観はアニメでないと表現できないかも、
アニメ化されたら声の出演は誰?
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DaisyAKM/菜摘
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53歳
誕生日:
1972/02/16
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