東京で裏稼業のコンサルタントをする水原。彼女にはかつて掟破りの島抜けをしたという誰にも言えない過去があった。彼女が裏稼業で成功していくことがやがて 『地獄島』 の 『番人』 の耳に入ることとなる。彼女を追って 『地獄島の番人』 が動き始めた。生き抜くために島との対決を決めた水原は、島へ乗り込むことを決意する。『オール読物』 連載を単行本化。
(大沢在昌)1956年名古屋市生まれ。慶応義塾大学法学部中退。『感傷の街角』 で小説推理新人賞を受賞しデビュー。『深夜曲馬団』 で日本冒険小説協会最優秀短編賞、 『新宿鮫』 で日本推理作家協会賞長篇賞、吉川英治文学新人賞、「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞、 『心では重すぎる』 で日本冒険小説協会大賞、『パンドラ・アイランド』 で柴田錬三郎賞を受賞。
珍しく女主人公のハードボイルド。『私』 と書いて 『あたし』 とフリガナが振ってある(笑)。
主人公水原は裏稼業のコンサルタント、それこそ何でも屋。たまに殺しもアリのちょっと物騒なお仕事。彼女がコンサルタントとして敏腕を奮い裏社会で有名になるまでは略されており、回想でも出てきませんが、それは必要がない記述ということなのでしょう。
水原はありとあらゆる裏の仕事をこなすため、運転手を1人と常に複数の車を所有しており、そのうち1台は足が付かないよう毎月専門の 『車屋』 が取替えに来る、という念の入れよう。銃の使い方にも慣れており軍隊出身か?もちろん銃の入手ルートも複数持っている。この辺りはさすが大沢先生、きちんと手抜きのない描写が面白いです。
評価:




(5つ満点)
かつて地獄を見た女がそこを抜け出し表(イヤ裏だー)社会で活躍するようになる。しかし彼女は常にその過去である 『地獄』 に恐怖を感じており、心の底では忘れ去ることができない。そこでその過去を断ち切るべく自らそこへ乗り込むが…。
前半はコンサルタントである彼女の元へ次々と訪れる訳アリのクライアントとの、水原の小気味よいやり取りが面白い。その中で徐々に彼女の 『過去』 に迫ろうとする人物達が近づいてくる。この辺りの展開もやはり秀逸。
そして 『地獄』 での決戦、ラストは続きがありそうな展開なのでもしかしたら続編があるかも?と期待してしまいます。
それにしても14歳から世間から隔離された 『地獄島』 で育った彼女が、どうしてこんな渡世術を身に付けたのかがちょっと出来過ぎな気がするけど…まぁいっか。
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