瀬戸内の島の東屋で、ビルの窓掃除のゴンドラの上で、古いアパートの一室で、わたしは私の大切な存在である 『N』 を守ることを決意した。ある高級マンションで起きた殺人事件の真実をモノローグ形式で解き明かす。『ミステリーズ!』 連載を単行本化。
(湊かなえ)1973年広島県生まれ。武庫川女子大学卒業。『聖職者』(『告白』 収録) で小説推理新人賞、『告白』 で本屋大賞を受賞。他の著書に 『少女』 『贖罪』 。
これまで湊氏のものすごいプロットに驚かされ続けて来たので、その期待ばかりが膨らんでしまったのもありますが今回は正直☆3.5位でしょうか。殺人事件が起こった理由が実は…という展開は宮部みゆき 『理由』 と同じ手法ですが、登場する人物らがそれぞれの大切な 『N』 という人物のために自分を犠牲にした、という話にしては、犠牲、献身が今ひとつ描ききれていないような。この消化不良感はどうしたら…もしかしてテーマは献身じゃなかったとか?
とはいえ湊さんお得意の 『事実の裏側に存在する真実』 の描き方は、今回も秀逸で楽しめます。相変わらず誰一人にも同情、共感できない小説ってのもすごいですよ。
評価:(5つ満点)