女王の品格
ヘレン・ミレンが素晴らしかったです、女王としての品格、威厳、存在感、そして苦悩と孤独を抱える様を見事に体現していました。必見です。
誰もが記憶にあるダイアナ妃のショッキングな事件。彼女の数奇な人生と対極をなす、伝統と格式を重んじるイギリス王室。その中心人物であるエリザベス女王にスポットを当てた本作は、映画の作りが女王贔屓かダイアナ贔屓か、ということよりも、こうした映画が作られたことそのものに拍手を贈りたいですね。
女王一家が休暇を過ごしていたスコットランドのバルモラル城の質素な様子、周囲の広大な自然と鹿狩りの様子、そしてその自然の中でみずからレンジローバーを運転し、川を渡る女王の姿が、痛々しくも凛とした姿で素晴らしかったですね。映像の持つ魅力で余す所なく女王の心情を伝えていたと思います。
評価:(5つ満点)
女王へのお作法いろいろ。
■ 必ず Ma'am
女王の秘書、ロビンが毎朝女王と皇太后に話しかける。
"Good morning, Ma'am, Ma'am."
最初の Ma'am は女王の方を向いて、次の Ma'am は皇太后の方を向いて。
2人がいるとロビンは必ず Ma'am を2回言う、律儀に必ず言う。
■ 必ず起立、背中は見せない
女王が入ってくると必ず起立、そして背中は見せない。就任挨拶に来たブレア首相と夫人も 『絶対に背中を見せるな』 と注意を受け、女王の前から下がる時にブレア夫人が歩きにくそうにバックしていく姿が面白い。
こうした視点からも興味深く観ることができました。
イギリス王室が国、国民にとってどのような存在であるか、反特権主義者であるブレア夫人の言動や、ダイアナ妃を悼む人々の言動がエスカレートし王室への批判へと繋がる様子などを描写することで表現しています。小さな女の子が女王へ差し出した花束で一気に気持ちが変わる…というところは出来すぎかな、とも思えますが、案外国民感情というものはあんな風にちょっとしたことで変化するものなのかもしれない。
キーワードは
People's Princess 人民のプリンセス(ブレア首相発言)
My People 私の国民(女王発言)
ですね。2つのPeople。立場は違えどそれは同じ人々のことを指しているのです。