パリにあるルーブル美術館はさながらパリの中にあるもうひとつの街のようだ。何10kmにも渡る地下の回廊、30万点に及ぶ美術品、2800室分もの鍵、10500段の階段。そしてそこで働く人々。学芸員、電気工事士、指物師、錠前師、室内装飾師、大理石職人、金めっき師、庭師、事務職員、食堂のコック、案内係、物理学者、化学者、資料係、修復師。ルーブルには1200人もの職人らがそれぞれの分野の仕事を受け持つプロなのだ。その様子を追ったドキュメンタリー、1990年フランス。
3年ほどまえにH市でも劇場公開されていましたが、上映がたったの1週間で見逃してからずーっと観たいと思い続けていた本作。こういうマニアックなドキュメンタリーはレンタルビデオにもなかなかないのですよ。郊外のNG図書館にDVDがあるのですがなんとNG図書館のDVD類は禁帯出なのです。ということでついに時間をとって本作を観に、NG図書館へ行くことができました!もう絶対に今日はこのDVDを観る。と堅く決心して行ってきました。
ルーブルは大英博物館と並ぶ世界に誇る大美術館。そこで働く人々は実に自然体ですね。無造作に絵画・彫像を運ぶ人々、日本の学芸員みたいに手袋なんてしてない(笑)。巨大な絵を巻いて保存してある状態から開いて行く作業、カビで一部分がハゲてた!でも修復師らは大胆に塗り、削り、ニスを重ねていく。ドキドキしないのか?この技と大胆さのおかげで今日も明日もこれからもルーヴルで作品が観られるのですね。
新しい制服のサイズ合わせ、額の修復(金箔塗り)、消火訓練など様々な日々の雑事の中、展示替えは進んで行きます。絵の組み合わせ(展示)について相談する学芸員ら、絵に関する膨大な知識と、それを更に上回る作品への愛情が必要な、美術館において最も重要な作業ですね。
職員らの日常が面白いです、館内にあるトレーニングジムや職員食堂の様子、昼休みにゲーム(クリケット?)をしてくつろぐ様子。重い彫像を苦労して台車で数人がかりで運び、設置して展示案内プレートを貼ろうとして、これはどっちに貼る?分からないよ聞いてくる、というやりとり。一人一人が皆ルーブルという美術館、人類の宝庫での仕事に誇りを持ち楽しんでいる様子がよく伝わってきます。
『ルーヴルとは何度も参照する大きな書物だ』 という学芸員。だからより多くの展示物を見せたいのだと彼は言う。そんな彼らを筆頭とする職員は1200人、所蔵資料は30万点。そしてそれらを運ぶための地下通路は、全長15キロ!ルーブルの裏側見学ツアーなどもあったらぜひ行きたいですね。これからルーブルに行かれるご予定の方はぜひご覧ください。
評価:(5つ満点)