かつて売れっ子カメラマンと呼ばれた俊介は今ではロクに仕事もせずぐうたらな毎日を送っている。それに対し妻のさくらはあれこれ文句を言いながらも世話を焼いている。結婚10年目。夫婦生活が終わりを告げようとして初めて妻の存在の大きさに気づく俊介だったが…。大人になりきれない中年夫婦の我儘と愛情を描く。
久々に泣かせてもらいました。うーん、薬師丸の存在感というか醸し出す雰囲気の上手さ、すごいわ。演技力というより空気力というか、彼女だからこの難役ができたんだな。石橋蓮司のオカマぶりもすごい、こちらも必見です。
この映画の醍醐味は、夫婦の関係は実は…というオチが中盤過ぎでもう明かされるところです。このオチは映画や小説では反則だろう、と憤るこちらの考えも汲み取り、そこから更に展開する二段三段オチ。北見と弟子とオカマのブンさんの関係も、パタンパタンと真実が展開されていく感じ。
素直になれない中年男と女の、結婚10年子どもなしのちょっとゆるんだ関係と感情を見事に表現していますね。トヨエツのちょっとたるんだおっさん体型も、おっさん言動も非常に巧いです。そして薬師丸の透明感というか少女性というか、あの何とも言えない初々しさは!見終わって館内のポスターの 『もう一人で暮らせるね/消えないでくれ』 とあるフレーズを見て、これまた巧い!!と一人大満足。
『今度は愛妻家』 というタイトルも素晴らしく、更に井上陽水の唄う主題歌がエンドロールで、心に沁みて行くのでした。泣きたい方は、必見です。
【後日談】
友人に 『全般にトヨエツも石橋蓮司も良かったがー何と言っても薬師丸の透明感が空気感が…』 とメールしたら返信に 『結局アンタは薬師丸のファンなだけじゃないの?』 。そうだったのか…友人によれば確かに私は薬師丸主演のドラマ 『恋愛中毒』 『ミセスシンデレラ』 とか一生懸命見ていたとか。そうか、自分でも知らなかったけど私は薬師丸のファンらしいです。今度から薬師丸主演の映画は必ず観ることとします(笑)。
評価:(5つ満点)