ヴェネチア国際映画祭第50回銀熊賞受賞作品。監督は 『あの子を探して』 でヴェネチア映画祭グランプリ2度目の受賞に輝き、3大映画祭を制したチャン・イーモウ。主演は本作がデビュー作であるチャン・ツィイー。この後多くの映画の主演を射とめ 『第2のコン・リー』 として目覚しい躍進を遂げる。監督によると本作は 『中国の伝統である詩的な物語。愛について家族について、そして家族の間の愛についての物語』 。現在をモノクロ、過去をカラーで撮影し、多くのカメラ技巧と音楽を駆使し物語を構築した。かつての雄大な中国の農村風景、そこで繰り広げられる日々の出来事、何気ない毎日が心を打つ。
この映画を友人に勧められたのはなんと、5年前。その頃香港へ行く予定だった私たち、『香港映画でオススメはないかね?』 と聞いた私にイチオシだと友人が言っていたのがこの映画。その後チャン・ツィイーはアクションもできるハリウッドスターとしても有名になり、この映画の存在も薄くなってきたような気がしていたが、見終わってみてそれは私の勘違いだと気付かされました。
チャン・イーモウ監督も派手さばかりを求めている監督かと思っていましたが、このような映画も撮っていたのですな。それだけでも一見の価値アリです。
本当に、化粧の薄いチャン・ツィイーの愛らしさと言ったらないです。それにこれがデビュー作なんて、なんという表現力の高さ。女優としての確かさを感じます。
そして中国の農村部というごくありふれた、豊かな生活に慣れてしまった私たち日本人から見ると何もないかのように見える場所に、確かに息づいている人々の生活と固い絆に、感動します。
原題は 『THE ROAD HOME』、『我が家への道』 と言いますが、それを 『初恋のきた道』 とした邦題がこれまた素晴しい。恋愛そのものが珍しかった時代に、後の夫となる学校の教師にひたすら恋焦がれ、彼のために食事を作り、彼をもてなし、彼も彼女へ髪留めを贈る。それを落としてしまい、必死に探し回る彼女の姿が、何とも言えない気持ちにさせられます。決して高価な物ではない髪留めを、心の底から喜び、それを失くしてしまったことに落胆し、必死で探し当てた時の彼女の表情が、本当に素晴しい。
人は、少ない物の中でこそ、豊かな感情を育てられる。と言うのは本当だと教えてくれる、映画です。
評価:





(すみませんやっと観ました)
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