昭和初期の信州第二刑務所。そこに拘置所を2度も脱走したいわくつきの囚人、鈴木雅之が移送されてくる。簡単には脱獄できないはずの信州第二刑務所を鈴木は1時間もたたないうちに脱獄。その後刑務所近くの線路沿いで身柄を取り押さえられた鈴木に看守長の金村は興味を持ち始める。その後も何度も脱獄を繰り返す鈴木と彼を見つめ続ける看守の心の交流を描く。なぜ鈴木は脱獄を繰り返すのか?そしてついに彼が投獄された 『監獄島』 で衝撃のラストが待ち受ける。
脱獄すること10数回、手錠を外すため体を張って道具を房内に持ち込んだり、ドアの鉄格子を外すためにこれまた体を張って…とその奇想天外な発想は吉村昭 『破獄』 に通じる執念ですね。板尾演じる鈴木はただひたすら脱獄し、毎回いつも同じように線路沿いで捕獲されるのはなぜなのか?刑務官らに対する反抗心だけとは思えないその奇怪な行動の意味は?
その謎が徐々に明らかに…と国村隼演じる刑務官と共にシリアスに盛り上がっていく中、獄中で拘束中の鈴木がいきなり歌い出すシーンは大爆笑!!私一人ゲラゲラ笑ってしまった…。この歌は吹き替えではなく板尾さんが歌っているそうで、なかなかそれがうまくて、もう笑いが止まらない!
鈴木が脱獄を繰り返す理由、胸にある 『逆さ富士』 の入れ墨の意味、など鈴木の過去が一気に明らかになったところで、ラストの舞台はいきなりの監獄島。こんなところ昭和初期でもないってば…そして看守らの服装や態度を見ると、これは映画 『蟹工船』 のパクリ?と細かい笑いの要素を忘れない演出。
戸籍を抹消され人間扱いされない監獄島(※だからそういう所は日本には過去にも未来にもありません)からも、脱獄する鈴木。これが最期の脱獄となるはずだった…がっ!衝撃のラストシーン。シリアスを保ち続けてきた国村隼の演技の髄が、ここに詰まっている!ラストいつまでも私は笑い続けてしまいました…板尾さん、素晴らしい笑いをありがとう!このシュールさ、誰にも真似できない!必見です。
評価:(まだの方はDVDでもぜひ!)