英一の両親は結婚20周年を機にマイホームを購入した。でもそれは普通の家ではなくて古びた写真館だったのだ。心霊写真が写るという写真館を舞台になぜか心霊写真バスターに祭り上げられてしまった英一。家族の抱える確執と友人らの支えを通じて成長していく英一の高校生活を描く。連作4編を収録、書き下ろし。
(宮部みゆき)1960年東京都生まれ。 『我らが隣人の犯罪』 でオール讀物推理小説新人賞、『蒲生邸事件』 で日本SF大賞、 『理由』 で直木賞、 『模倣犯』 で毎日出版文化賞特別賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、『名もなき毒』 で吉川英治文学賞を受賞。
さすが宮部、やっぱり泣かされました。この筆力、やはり日本を代表する作家ですね。 【少年を書かせたら宮部の右に出る者なし】 と言われる宮部、これまでもそしてこれからも健在です。
英一、テンコ、ピカ、すべての登場人物らが細やかに設定され響き合っています。ごく普通の日常(心霊写真騒動はあったけど)の繰り返しなのに、それぞれが抱える辛い想い、生きづらさは高校生の英一やまだ小学生の弟ピカにもやっぱりある。でもそれを家族が、会社の人が、周囲の人がこっそり助け合うことで支え合っている。
世知辛い世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。ということを英一を通じ私達に再確認させてくれます。やっぱり宮部だなぁ。と深く実感できる、一冊です。
評価:(満点!)
19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺の草原地帯を舞台に12歳の少年カルルクの元に嫁いできた8歳年上の20歳の娘、アミルが主人公の物語。放牧、農耕、狩りを生計とし刺繍や織物を生業とする、シルクロードに生きる民の暮らしを描く。
(森薫)1978年東京都生まれ。『エマ』 で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
森薫と言えば 『エマ』 。イギリスを舞台にメイド エマの活躍(どんな?)を描いたマンガ、かなり大人気らしく読みたいけど10巻位完結済でもう買えない…。で新作ならまだ1巻が出たばかり、ということで新作へ。
中央アジアの風俗を描いているところが興味深いです、女の子が生まれたらすぐに嫁入りに持たせる絨毯などの布類を用意し始めるところ、定住と放牧の民の暮らし、などなど。実際はもっと生活は厳しいのでしょうが、その美しい部分をより強調できるマンガという手法って、素晴らしい。
続巻も楽しみにしてます。
評価:(5つ満点)
吉原の遊女 朝霧は残り数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった、その男に出会うまでは。生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、吉原を舞台に遊女達の叶わぬ恋を綴った連作短編集。第5回女による女のためのR-18文学賞大賞、読者賞同時受賞。単行本に書き下ろしを加えて文庫化。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 主な著書に 『白蝶花』 『セレモニー黒真珠』 『群青』 など。
(収録作品)花宵道中/薄羽蜉蝣/青花牡丹/十六夜時雨/雪紐観音/大門切手
書き下ろし章 『大門切手』 を読むために再読。本作は宮木のデビュー作であり、改めてその秀作ぶりを堪能いたしました。でもせっかくの書き下ろし 『大門切手』 はやや蛇足感も…。続きが読みたいものとしてはやっぱり、その後の緑の物語ですかね。
解説は嶽本野ばら氏でこれがまたぶっ飛んでいてオススメです。爆笑できます。
評価:(5つ満点)