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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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最強のふたり

パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった大富豪のフィリップと、介護役として男に雇われた刑務所を出たばかりの黒人青年ドリスの交流を、笑いと涙を交えて描く実話に基づく物語。まったく共通点のない2人は衝突しあいながらもやがて互いを受け入れ友情を育んでいく。フランス。

巷で話題の本作、観てきました。『あなたにとって最高の一作に!』 とまでは行きませんでしたが…。フランス映画はどれもちょっとした皮肉というかエスプリが効いていて、それに反応できないと楽しめませんね。

もちろんこの映画でも主人公が大富豪であるとか、ドリスが思っていたよりいい人だったとか、そういうことが大きな意味を持つのですが、人生は実はそういう素敵な偶然の積み重ねで成り立っている、というストーリー、ご都合主義かもしれないですけど私は結構好きです。

どちらかというと笑いはあまりなく、しんみりとさせるヒューマンドラマです。フランス映画のこういう雰囲気が、好きですね。
 
評価:(5つ満点)
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クラウドクラスターを愛する方法*窪美澄

さとこはイラストレーターの仕事を細々としながらもうじき30歳を迎える。誕生日を間近に控えた大晦日の朝、結婚を考えていたはずの彼が家を出た。大人になってから再会した実母との距離感もうまくつかめない。どうすればうまく生きられるのか。書き下ろし、『小説現代』掲載に加筆修正して単行本化。
(窪美澄)1965年東京都生まれ。カリタス女子中学高等学校卒。フリー編集ライター。『ミクマリ』 で女による女のためのR-18文学賞大賞、『ふがいない僕は空を見た』 で山本周五郎賞受賞。著書に 『晴天の迷いクジラ』 。
(収録作品)クラウドクラスターを愛する方法/キャッチアンドリリース

クラウドクラスター、というのは積乱雲のことだそうです。積乱雲のようにかつて家を出た母、大人になってから再会しても自分にとって母はやはり積乱雲のように激しく付き合いにくい存在であった。それでも12歳の時に家を出た母と、母の再婚相手との3人で、まるで家族のような付き合いを続けるさとこ。

さとこには3年同棲した向井くんという恋人がいるが、彼の家に住んでいるというのにケンカして出て行ってしまったのは向井くん。この彼との関係もまた一歩踏み出せない。

一歩踏み出せないのは、さとこが家庭というものに常に不安定感、不安を感じているから。子どもの頃にそれが確立していないと、大人になってこうも苦しむものか。『キャッチアンドリリース』 も同じく片親同士の小学生の交流を描いた作品ですが、親が離婚した子どもってこういう想いでいるんだろうなぁと切実に感じてしまい、切ないです。

家族。人間関係の根本である、家庭。親という存在の責任は、重いです。それでもなお子ども達は自分の力で生きていこうとする、そのたくましさも同時に感じました。

評価:(5つ満点)

最果てアーケード*小川洋子

天井は低く奥行きは限られショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない。そこは愛するものを失った人々が想い出を買いにくる店が集まるアーケードだった。『BE・LOVE』連載の同名コミックの原作を単行本化。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞、『ミーナの行進』 で谷崎潤一郎賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』『人質の朗読会』 など。
(収録作品)
衣装係さん/百科事典少女/兎夫人/輪っか屋/紙店シスター/ノブさん/勲章店の未亡人/遺髪レース/人さらいの時計/フォークダンス発表会


私が読む小説のうち、こういう 『おかしな話』 を書くのは小川洋子と川上弘美かな。今回も非常におかしな話です。表紙絵の通り、こういうおかしな物がショーウィンドウに並んでいる商店街のお話。

収録作品一覧にある通り、それぞれ一癖も二癖もある店主が、一体何の役に立つのかという物を売る商店街。舞台衣装を作る店とか、勲章だけを売る店とか。ひょっとして商店街はもうとっくの昔に廃屋になっていて、そこにいる人々は実はかつての店主達の想いが亡霊のようになっているというオチなのではないか、とも思ったのだけどそういうオチではないです。

物、とくに人がこだわった物には人の想いが宿りやすい。ある人にとってはそれが百科事典であったり、買っていたウサギの目であったりする。誰しも自分の中に大切な思い出があり、それを共有してくれる人を探している、ということを商店街の店は教えてくれているのかもしれません。

怖い話が嫌いな方は読まないことをおすすめします。

評価:(5つ満点)

逃走*薬丸岳

閉店後のラーメン店で店主が何者かに暴行され死亡した。通報した若者を容疑者として始まった捜査は早期解決が確実視されていたが。『佐賀新聞』『大阪日日新聞』などで順次掲載された作品を加筆修正して単行本化。
(薬丸岳)1969年兵庫県生まれ。駒沢大学高等学校卒業。 『天使のナイフ』 で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。主な著書に 『闇の底』 『悪党』 『刑事のまなざし』 『死命』 など。

単純だと思われた事件の真相に実は複雑な事情があった。という物語。登場人物ら一人ひとりの心情をもっと深く考えながら読めれば良かったんだけど、薬丸岳の文章はあんまり良すぎてついつい夜更かしして一気に読んでしまう。

小説の醍醐味は行間にあると思うのです。少し読んでは本を置き、仕事の合間などにふとあの部分は実はこういうことでは?と創造を膨らませる作業、それが面白い。なので一気読みしてしまうと面白かったのだがどういう話だったっけ?と思ってしまうことも多々。

多くの書評に二時間ドラマ的展開、とあるように、犯人像が途中でひっくり返り読者に同情を誘う設定になっているが、それもちょっとどうかなという意見には、少しうなづいてしまいます。小説のエンタメ性は大事だと思いますが、デビュー作 『天使のナイフ』 のような作品をまた読みたいです。

評価:(5つ満点)

夢売るふたり

東京の片隅で小料理屋を営んでいた夫婦は火事ですべてを失う。再出発のためにふたりが選んだのは夫婦で働く結婚詐欺だった。嘘の繰り返しはやがて夫婦の歯車を狂わせて行く。『ゆれる』 『ディア・ドクター』 の西川美和監督作品。日本。

西川美和監督作品。ですから私には必見です。先に試写会に当たったという友人にぜひ観てきてください、とメールしたところ、内容が自分に重くて具合悪くなったと返信が…ごめんなさい。でもそのメールで私はますます楽しみになりました。

騙す男、騙される女。騙す男をそそのかす女。というありきたりな図式を、西川監督の脚本と、何よりもアベサダのコミカルな雰囲気で重たくなく仕上げています。それでも徐々に人を騙し続けることの罪悪感に押しつぶされそうになる夫、アベサダ。そして夫の夢の実現のためとはいえ、騙す相手の元へ夫を送り出し続けることに苛まれ始める妻、松。徐々に狂気を帯びてくる松の様子がまた、いいです。

何と言っても見逃してはいけないのが、ラストの表情。西川美和監督お得意の、ラスト主人公の顔のアップが!今回は松たか子です。松さんも、あんな表情できる大人になっていたのか…と感動しました。
『ゆれる』 のラストの香川照之にも劣らない、素晴らしい表情です。

ぜひとも、ご覧ください。

評価:(5つ満点)

ツナグ*辻村深月

突然死したアイドル、癌で逝った母、喧嘩したまま亡くなった親友、失踪した婚約者。様々な事情を抱えた依頼者が今日も死者との仲立ちをする使者-ツナグを頼ってくる。彼らは喪ったものを取り戻すことができるのか。『yom yom』 連載に加筆修正し単行本化。
(辻村深月)1980年生まれ。千葉大学教育学部卒。『冷たい校舎の時は止まる』 でメフィスト賞、本作で吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。主な著書に 『凍りのくじら』 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 『オーダーメイド殺人クラブ』。
(収録作品)アイドルの心得/長男の心得/親友の心得/待ち人の心得/使者の心得

映画化されたということで話題の本作、職場の先輩が貸してくれました。死者との面会を叶える 『使者(ツナグ)』 という名前の霊媒師?イタコ?の物語。使者の家系には死者をあの世から呼び出すことのできる特殊な能力が代々備わっており、長年使者として責務を果たしてきた祖母の後継者として選ばれた孫である男子高校生を中心とする物語。ちょっと不思議な力を持ってるちょっと特別な子、というイメージは描きやすいですね。

使者に依頼をする依頼人の事情が、死んだ母親に会いたい、という普通の理由以外のものもたくさんあるのが面白いですね。どんなに生前付き合いが深い仲でも、相手が亡くなってしまえばそのことは思い出として残す、つまりある程度はもう諦めるのが普通ではないかと思うのですが、そこで使者の存在を知った人々は何としてでも死者である自分の会いたい人に会おうとする。

人の想いは深いものですが、それに捕らわれていては生き残った者は生きるのが辛いだけでは。という気持ちに、使者と彼らが呼び出す死者は、答えを用意してくれるのでしょうか。

辻村深月は初めて読みましたが、読みやすいですね。ちょっと優しすぎる気もしますがいいと思います。映画も時間があれば観たかったです。

評価:(5つ満点)

君や僕にちょっと似ている

abitlike.jpg挑むような目つきの女の子やユーモラスでありながらどこか哀しげな犬の姿を絵画や立体で表してきた奈良美智は、若い世代を中心に絶大な人気を誇ってきました。平成10年から奈良美智の作品を収集してきた青森県立美術館では開館来、常設展示でその活動を紹介してきましたが、個展の開催は今回が初めてです。本展では近年多様な経験の積み重ねの中で創作の原点を強く意識し始めた奈良の、絵画やドローイング、初挑戦となるブロンズ彫刻など新作の数々を展示いたします。大勢の市民参加によって実現された吉井酒造煉瓦倉庫(弘前市)での個展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」から10年、「A to Z」展から6年、奈良美智のあらたな世界をお楽しみください(青森県立美術館ホームページより)。

行ってきました奈良美智展。いつもながら友人さつきさんに運転を頼りっぱなしです、いつも本当にありがとうございます。

今回は新作展、ということで絵画以外も彫刻もあり、と楽しみにしていたところ、女の子の頭の彫刻の大きさに、ただビックリでした!とにかくでっかいです、2m四方くらいあります。渋谷駅にあるモヤイ像、あれを二回りくらい大きくしたような女の子の頭だけが、どーんと2つほどありました。かなりのインパクトです。

ポスターにもなっている 『春少女』 を始めとする新作絵画は、何号なんだろうあの大きさは?すごく大きなキャンバスで四畳半くらいでした(イヤそこまで大きくないかも)。やはり本物は美しいです。同じ画材を使ってもこうは描けないだろうな、という女の子達を観ることができて本当に良かった。

今回も奈良さんお得意の段ボールや封筒の裏に描いたイラスト様の作品もあったのですが、家に帰ってから思いだしてみるとやっぱり印象深かったのは春少女などの大きな絵画でした。本物の絵を買う余裕などはとてもない私ですが、本物を家に置きたいと思う人の気持ちが少し分かりました。

それにしてもあの大きな女の子の頭、どうするのかなぁ。個人宅に入れるにはでっかすぎるよね。友人さつきさんが 『絵や女の子の表情が全体的に柔らかくなった』 と言っていて、なるほどそうかもなぁと思いました。とんがっていた奈良さんも少し丸くなったのかな?(笑)

あおもり犬に帽子をかぶせようプロジェクトも進行中で、すごいでっかいベレー帽みたいなのをかぶってました。つり上げるのにクレーンが出動したとか。その写真は…撮ってない(苦笑)。

展覧会を観に行けることにも感謝ですが、趣味の合う友人と一緒に行けることが一番の感謝です。首都圏と違ってなかなか展覧会も回ってこないので貴重な機会にご一緒できて本当に良かった。またいいもの来たら行きましょう。

評価:(5つ満点)

テルマエ・ロマエ*ヤマザキマリ

古代ローマで浴場を専門とする設計技師ルシウス・モデストゥスは、伝統的な浴場《テルマエ》を維持すべきとの考えから、世間から孤立し失業状態となる。友人マルクスに誘われテルマエに行ったルシウスは、浴槽に潜ったことでなぜか時代を超えて現代日本の公衆浴場へとたどり着く。そこではローマ人ではない 『平たい顔』 の民族が素晴らしい浴場でくつろいでいた。日本の銭湯の素晴らしさに感動したルシウスは、その工夫を古代ローマに持ち帰り一躍人気設計技師となる。評判を聞きつけてついに皇帝お抱えのテルマエ技師となったルシウスは、孤独に苦しむ皇帝の心を慰めるためテルマエ設計に奔走する。コミックビーム(エンターブレイン)連載中。(ヤマザキマリ)1967年東京都生まれ。漫画家。イタリアを経て現在はアメリカ シカゴ在住。本作で漫画大賞2010、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。

映画化で話題の本作、貸本屋(レンタルビデオ屋のこと)で借りました。正直画もあんまり上手じゃないし果たしてそんなに面白いのか…と思っていたら、3巻くらいから俄然面白くなってきて、ところどころ爆笑しました。

ひたすらにマジメに温泉道を貫くルシウスが、いいですね。テルマエを愛しテルマエを愛するローマ人を愛し、そして彼らを統べる皇帝を愛するルシウス。偉大故に孤独である皇帝の魂を慰めるため、ルシウスはひたすら温泉道、じゃなくてテルマエ建設に精進するのでした。

ところどころに挟まれている著者ヤマザキ氏の古代ローマに関するコラムが結構濃くて、しかもこういう活字を読み飛ばせない性分なもので、という意味で読了に若干時間がかかります(笑)。映画はほぼ原作通りでよくできてるなーというかよくこんな映画作ったなーと改めて感心してしまいました。

ジミーに面白いマンガです。続刊も楽しみです。

評価:(5つ満点)
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急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
読書 映画鑑賞 観劇
かぎ針編み プール
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車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
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