天井は低く奥行きは限られショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない。そこは愛するものを失った人々が想い出を買いにくる店が集まるアーケードだった。『BE・LOVE』連載の同名コミックの原作を単行本化。
(小川洋子)1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 『揚羽蝶が壊れる時』 で海燕新人文学賞、『妊娠カレンダー』 で芥川賞、『博士の愛した数式』 で読売文学賞、本屋大賞、『ミーナの行進』 で谷崎潤一郎賞を受賞。主な著書に 『ブラフマンの埋葬』 『薬指の標本』『人質の朗読会』 など。
(収録作品)
衣装係さん/百科事典少女/兎夫人/輪っか屋/紙店シスター/ノブさん/勲章店の未亡人/遺髪レース/人さらいの時計/フォークダンス発表会
私が読む小説のうち、こういう 『おかしな話』 を書くのは小川洋子と川上弘美かな。今回も非常におかしな話です。表紙絵の通り、こういうおかしな物がショーウィンドウに並んでいる商店街のお話。
収録作品一覧にある通り、それぞれ一癖も二癖もある店主が、一体何の役に立つのかという物を売る商店街。舞台衣装を作る店とか、勲章だけを売る店とか。ひょっとして商店街はもうとっくの昔に廃屋になっていて、そこにいる人々は実はかつての店主達の想いが亡霊のようになっているというオチなのではないか、とも思ったのだけどそういうオチではないです。
物、とくに人がこだわった物には人の想いが宿りやすい。ある人にとってはそれが百科事典であったり、買っていたウサギの目であったりする。誰しも自分の中に大切な思い出があり、それを共有してくれる人を探している、ということを商店街の店は教えてくれているのかもしれません。
怖い話が嫌いな方は読まないことをおすすめします。
評価:(5つ満点)