ローマで日本人少女が失踪する。誘拐か、テロの序章か?真相を追い一匹狼の外交官 黒田がイタリアを駆ける。2009年7月公開映画 『アマルフィ』 のプロットを元にしたエンターテイメントサスペンス。
(真保裕一)1961年東京都生まれ。小説家、脚本家。シンエイ動画入社後 『連鎖』 で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。『ホワイトアウト』 で吉川英治文学新人賞、『奪取』 で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、『灰色の北壁』 で新田次郎文学賞を受賞。 映画脚本参加に 『ホワイトアウト』 『ドラえもん』 シリーズ、『アマルフィ 女神の報酬』 など。
真保氏は映画 『ホワイトアウト』 の原作者として有名ですが、元々映画制作会社のスタッフだったのですね。なるほどだから映画として 『魅せる』 シーンの描写が上手なわけです。しかしそれを返せば逆に映画だからこそ活きる場面だろうなぁ、という印象が強くなってしまった仕上がりであるのも、否めません。
本作は織田裕二主演映画の原作プロットであり、映画制作及び織田主演が先に決まっていたということで私の頭の中も最初から映像:織田裕二。そこから逃れられません…。全体としてはまとまっているようですが犯人像がイマイチつかめないし、美しいアマルフィの景色が設定が冬ってことでかなり半減でなかろうかー?とか思ってしまいました。やっぱりここは夏でしょう。
映画は多分…行きません、ごめんなさい。でもテレビ放映されたら見てみたいな。
評価:(5つ満点)
植物園の園丁は椋の木の巣穴に落ちる。巣穴の中には不思議な世界が広がっていた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズの神主、烏帽子を被った鯉。植物や地理を豊かに描き、埋もれた記憶を掘り起こす異界譚。
(梨木香歩)1959年生まれ。児童文学者のボーエンに師事。 『西の魔女が死んだ』 で日本児童文学者協会新人賞、『裏庭』 で児童文学ファンタジー大賞を受賞。主な著書に『からくりからくさ』 『エンジェルエンジェルエンジェル』 『村田エフェンディ滞土録』 『春になったら苺を摘みに』 、絵本に 『ペンキや』 『マジョモリ』 『ワニ』 『蟹塚縁起』 など。
非常に不思議な雰囲気の物語。家守綺譚に通じるものもあるようで、もっと奇妙な物語。
植物園に勤める佐田は妻に先立たれ下宿屋で独り身で暮らしている。寂しいはずの毎日だが淡々と暮らしている様子。そんな佐田が心を傾けているのは園内の一角の調整で…そこに大きなウロがある。ふるやのもり、で猿と泥棒がしっぽを引き合ったウロのようなイメージ?
前世犬だったという歯医者の奥さんやらおかしな異形のものばかりが出てきてどうなるやら…。正直雑多な感がするものの、ラストは清々しい。
評価:(5つ満点)
生きてるうちに言えればよかったのだけど…。町の葬儀屋セレモニー黒真珠を舞台にアラサー女子 笹島、メガネ男子 木崎、謎の新人女子 妹尾が織り成すドラマティックハートウォーミングストーリー。 ダ・ヴィンチ連載に加筆して単行本化。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で 『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 主な著書に 『白蝶花』 『雨の塔』『群青』 など。
宮木の新境地か、純愛を描いたシリーズ。とは言え社長以下強者揃いのセレモニー黒真珠の面々、キャラが立ちすぎで非常に面白い。一章のみ一人称が妹尾か笹島か読者が迷うように書かれておりやや凝った構成だが、二章以下はトリックなしで素直に読める。それぞれの事情を盛り込んで上手に連作になっているところはやはり宮木の十八番。
読後さわやか?な葬儀屋物語、社長のエピソードがあっても良かったけどそれはベタになりすぎかな?宮木さんは私にとってハズレが全くなく、最も注目する若手作家の1人です。
評価:(5つ満点)
『彼』 の一体何を知っていると言うのか?『私』 のことさえよく分からないのに。心に闇を抱えつつ世界は今日も朝を迎える。男女と親子の営みを描くミステリ+心理小説+現代小説という新しい形の連作短編集。『小説新潮』連載を単行本化。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『しをんのしおり』 『光』 『三四郎はそれから門を出た』 など。
非常に面白い趣向。ラストまで 『彼』 こと村川は一切登場せず、彼が一体どんな人物であったのかもイマイチ掴めない。読了直後それが不満だったが、後から考えるとそれでいいのかもしれない。村川を知ることが目的なのではなく、村川にかかわった人々の様相を知るのが目的なのだから。結局村川は皆にとってどんな存在だったのだろう…憎まれて恨まれて、それでも無視できない存在。それも愛情のひとつだということだろう。
三浦しをんのオタクぶり(?)が分かる、マニアックな物語。
評価:(5つ満点)