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読書と映画と観劇と

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カムイ外伝

kamui.gif強靭な意志を持つ剣の達人である忍者 カムイは理不尽な殺戮も厭わない掟に縛られた世界に嫌気が差し、真の自由を求め忍の世界を抜け出す。しかしそれは裏切り者として追っ手と戦う運命を背負うことでもあった。誰かを愛したい、誰かに愛されたいと渇望しながらもそれが叶わないものとして人と関わろうとしないカムイ。そんなカムイが半兵衛という漁師の家族に迎え入れられ、そこで初めて人と触れ合う温かさを知り恋を知る。しかし追っ手はすでに罠を仕掛け虎視眈々とカムイを討ち取るその時を待っていた。それも最も残忍なやり方で。宮藤官九郎/崔洋一脚本、崔洋一監督作品。

カムイ外伝。懐かしいですね。我が家ではずっと父がサンデーから始まりビッグコミックを買っていたので、私も中学生の頃から時々読んでおりました。しかしカムイ外伝は私の中ではビッグコミック掲載の中で1番目か2番目に 『つまらない』 作品として認識されており…白土先生本当にすみません。でも女子中高生にはかなり難解な上にやたらに内容が暗かったので…。原作ではカムイは毎回とにかく追っ手から逃げて、ひたすらに戦っているだけ、という印象だったので果たして映画化して内容はどうなるのかと思ってはいたのですが、最近大人気の松ケンに同じくハマっている私としては、松ケン見たさに行ってきました。そして見事にガッツリハマってきました!

多くの映画レビューで言われている通り、とにかく松ケンが 『本当にカムイ』 なのです。カムイから沸き立つ孤独感、寂寥感、憎悪、すべてがもうとにかく、最初から最後までカムイでした。映画鑑賞前はワイヤーアクション多用らしいから結構チャチな映画に感じるかも、と心配していたのですが、そんなワイヤーアクションの不自然さなどもはね飛ばすほどの松ケンのカムイぶりに、役者魂どころか執念に近いものを感じました。

ストーリーも秀逸です。エピソード 『スガルの島』 を選択し脚色した見事な脚本、カムイを待ち受ける罠、罠、罠の展開。脇を固める俳優陣もまた素晴らしいです、佐藤浩市のバカ殿ぶり、追っ手の忍者達の執念深さ、大頭の抗えない存在感、漁師 半兵衛を演じる小林薫のずるがしこさと家族への愛情。そしてカムイと同じ抜忍で今は半兵衛の妻として幸せに暮らしているスガル役の小雪。ちょっと欲を言えば半兵衛役はもうちょっと若い俳優でも良かったのでは、さらに小雪はやっぱりキレイすぎる上に優しい雰囲気すぎるのでは?と思いましたが、そのギャップが面白いから小雪になったのか?と鑑賞中は考える暇もないほど、映画中は松ケンに釘付け。でございました。まさに一挙手一投足が目が離せないというか、カムイを全身で表現しようとする松ケンの迫力にこの映画はかなり☆加算です。松ケンを観るだけでももう十二分の価値あり。…という感想ではあんまりなので、もうちょっと行ってみよう(笑)。

セットも見応えあります、貧しい漁村の様子、サメに襲われる漁村の人々、そのサメを退治する謎の軍団 渡り衆の船など、素晴らしい出来です。ラストの展開も漫画的で実に良かった、そうだろうやはり…的な展開なのですが、ナレーションの 『カムイの幸せは、この世にはないのか。』 という一言がまた沁みます沁みます…。しかもこのナレーションが山崎努だし、というすごい豪華なラインナップです。ところで伊藤英明って若い頃の江口洋介によく似てませんか?また間違えちゃいましたよ…頭ではこれは伊藤、って分かっているはずなのに 『もしや江口?』 といつも思ってしまう私って…。

いつもにまして支離滅裂な感想ですが、とにかく時間がある方は松ケンを観にぜひ劇場へお運びください。苦悶に耐える松ケンも表情もたまらない(?)ですが、敵意丸出しだった松ケンカムイがニコッと笑ったシーンが!! 必見ですよ!
 『ウルトラミラクルラブストーリー』 の時の舞台挨拶はやっぱり無理して行くべきだったかも。

評価:(松ケン効果で満点、映画としては4、笑)
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野良女*宮木あや子

noraonna.jpg幸せになるまで死ねません。恋も仕事も夢見る少女じゃいられない5人のアラサー女子の、タテマエ一切ナシのガチガールズトーク。心の叫びがコダマする、笑って泣いて仲間と飲んで、明日もがんばる痛快作。
(宮木あや子)1976年神奈川県生まれ。 『花宵道中』 で  『女による女のためのR-18文学賞』 大賞と読者賞を同時受賞しデビュー。 主な著書に 『白蝶花』 『雨の塔』 『群青』 など。
(収録作品)尻の穴に座薬/くちびるから松阪牛/太陽にぽえむ/模型だらけの俺んち/曇りガラスの三十代/愛して野良ルーム


アラサー女子のガールズトーク。らしいがやや煩雑すぎ、コレは初めて宮木で外したか…と思っていたところ、最後の横山が主人公の『曇りガラスの三十代』 と書き下ろし終章の 『愛して野良ルーム』 でまぁキレイにまとまったかな。アラサーってことはもういい大人なのにこの子達はいつまでも子どもだなぁ…なんだかんだ言って恋愛至上主義だし。今時の子どもみたいな30歳を描いたんだろうけど、無責任っていいなぁという感想しか出ないぞ。本当は無責任な人生なんてイヤだぞ。

評価:(読者サービスし過ぎ?)

刻まれない明日*三崎亜記

kizamare.jpg開発保留地区。それは10年前3095人の人間が消え去った場所。だが街は今でも彼らがいるかのように日々を営んでいる。存在しないはずの図書館から借りられる本、ラジオ局に届く失われた人々からのはがき、響き渡る今はもうない鐘の音、席を空けて待ち続けているレストラン。そして開発保留地区行きの幻のバス。失われた時が息づく街を舞台にその痛みから立ち上がる人々を描く。『失われた町』 続編。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。著書に 『バスジャック』 『失われた町』 『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』 。

『失われた町』 続編、前作よりずっとよく出来ています。町の失われる構造についても前作よりずっとよく理解できますね。三崎お得意の不可思議世界観が今回もよく表現できていると感じました、職業としての歩行技師とか、居留地の様子とか。個人的には見えない図書館、第五分館に心惹かれますねやっぱり。

過去と決別し新しい人と出会い、その人と歩むことを決意する人々が多く出てきます、人はやはり強いものなのですね。 『刻まれない明日』 というタイトルもなかなか意味深ですね、どういう意味かな?分断されないってこと?実際には明日への一歩を踏み出す人々の強い意志を描いた物語。前作を読まなくても読めますが、読んでおいた方が三崎氏の織りなす不可思議世界の考え方がより分かり、楽しいです。

評価:(今回も装丁がいい)

エクセルの果て

deadend.png

この世の果て、エクセルの果て
時々、何かの果てを見たくなることありませんか。この世の果ては見られませんがエクセルの果てでしたら見ることができます。

エクセルは非常に広い方眼紙のようなものです、この方眼紙の左上の端っこを、私達は普段使用して色々な計算をしたりしています。果てがないように感じるエクセルのワークシートですが実は果てがあります。これは演算の限界(コンピュータ処理の限界)により定められた結果です。全てのセル(マス目)を使用して演算を行いますとこのIV65536までが限界だというということなんですね。ちなみに行番号(横の並び)は1から65536まで、列番号(縦の並び)はAからZまで行くと次はAAからAZ、その次はBAからBZとなりIVまであります。

普段は見ることの出来ない右下のワークシートの果てに行くにはどうしたらいいでしょうか。

よくワークシート上でドラッグしすぎてしまい最初のセルA1にすぐに戻りたい時はCtrl+Homeキーを押します。この逆をすればよろしいのです、つまりCtrl+Endでワークシートの果てに行きます。ところが普段使用していない果てについてエクセルが認識していない場合、Ctrl+EndですぐにIV65536が表示されない場合があります。まずは横スクロールバーもしくはキーボードの→(右矢印)でずーっと右へ移動してみましょう。IV1で行き止まりになります。そこからずーっと下方向へ下がっていけばよろしいのです。

ずーっとずーっと…飽きてきましたね。そこで便利なのが 『名前ボックス』 です。ワークシートの左上の上の部分、画像ではIV65536と表示されている部分を 『名前ボックス』 と言います。ここに直接数値を打ち込むと、指定したセル番地へジャンプしてくれます。

こうしてついにエクセルの果てにたどり着けるというわけです。この記事の意味ですって?たまに意味のない記事があってもいいじゃないですか…いえ毎回意味のない記事ばかりですからね。

暇つぶしに、話の種に、エクセルの果てを見たいときに、お試し下さい。

にょにょっ記*穂村弘

nyonyokki.jpg退屈な日常をくしゅっとまるめたい人へ。くすくす笑えて時に爆笑。穂村弘の不思議でファニーな毎日を綴る。『別冊文藝春秋』 連載に加筆修正して単行本化。
(穂村弘)1962年北海道札幌市生まれ。上智大学英文学科卒業。歌人、翻訳家、エッセイスト。『短歌の友人』 で伊藤整文学賞、『楽しい一日』 で短歌研究賞を受賞。主な著書に 『シンジケート』 『短歌という爆弾』 『もうおうちへかえりましょう』 『本当はちがうんだ日記』 など。

にょっ記よりはややインパクトが少ない、パート2ってそんなもんだけどやっぱり残念。結婚してホムラさんも落ち着いちゃったのかしらね。古本ネタも少ないし、こうなったら古本ネタだけで一冊作ってくれてもいいのに。リカちゃん電話、GIジョー電話など笑える話題もポチポチありますが、本書一番のヒットはこれかな。

◆ タカオ
友人に聞いた話を思い出す。バスの中で母親に尋ねられたのだという。「タカオって誰?」
母が指さした先には紳士服の広告があった。「エレガントなスーツを貴男に」


ハチミツ、というのもなかなかウケました。

◆ ハチミツ
太陽印の純粋ハチミツは栄養満点です。
パンに!ケーキに!ヨーグルトに!お子さま達に!
ぎょっとする。


確かに並列で並べる語句としてはいきなりだもんなぁ、 『お子さま達に』 。オオカミさんにでも勧めているのだろうか?

評価:(5つ満点)

蟹工船2009

kanikosen.gif昭和初年のある春。折からの大不況にあぶれた鉱夫、農夫、労働者上りの雑夫たちを乗せた蟹工船はベーリング海の漁場めざして函館港を後にする。連日吹きすさぶ嵐に船酔いし不潔な生活から続出する病人たちに監督の浅川を中心とする幹部らは無理矢理に作業を強制する。連過労で病死した青年の体をすげなくつめたい海に沈めた無情さに漸く怒り心頭に発した漁夫たちはついに就業を拒む。代表達は監督に要求書をつきつけ拳銃で威脅しようとする彼を叩きのめす。だが翌朝浅川らの連絡で駈けつけた駆逐艦から武装した水兵が工船に乗り込み暴動代表者の拘引を始めるのだった。労働者に明日はあるのか。小林多喜二原作を映画化。

近未来的、という予告の評判通り?というより舞台のようだった。これは映画よりも舞台化の方が面白いのでは。悲壮感を敢えてできるだけ排除してあったのはいいと思うが、若干焦点がズレていたような気がしないでもない。
それにしてもどん底の蟹工船の対極として描かれているのがロシアの豊かさ!?とは…全くもって時代を反映してます。現代に通じるものがあるのか?という視点で一生懸命観ましたが、やはり違うような気がするのは私だけじゃないはずですが…。

観客は5人。ゆったり観られましたが途中寝てしまいました…やや単調な部分もあり。

評価:(5つ満点)

13階段*高野和明

13kaidan.jpg犯行時刻の記憶を失っている死刑囚。その冤罪を晴らすべく刑務官だった南郷は前科を背負った青年 三上と共に調査を始める。手掛かりは死刑囚の脳裏に甦った 『階段を上った』 という記憶のみ。処刑までに残された時間はわずか。2人は無実の男の命を救うことができるのか。事件を追うごとに徐々に事件の側面が明らかになってゆく。江戸川乱歩賞受賞作。
(高野和明)1964年東京都生まれ。ロサンゼルス・シティカレッジ中退。帰国後脚本家となる。本作で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。主な著書に 『グレイヴディッガー』 『K・Nの悲劇』 『幽霊人命救助隊』 など。


見事としか言い様のないプロット、そして人の狂おしいまでの想い、愛情。久々に読みながら 『あっそうか!』 と叫んでしまいました(笑)、見事な構成です。薬丸岳が読んで感銘を受け、小説家になる決意をしたという一作、というのにも深く頷けてしまいました。コレはとにかくスゴイです、恐るべし乱歩賞。

物語は最初からちゃんと読者にヒントを与えながら進んでいきます、何度も言っておりますがいきなりラストで大ドンデンという物語はキライですね。本作は何度も途中で 『そういえばアレは?』 と反芻して楽しめた、本当にミステリーらしい秀作です。この読書の合間の、本の中身について考えを巡らせる時間を持つということが、もしかすると読んでいる時より楽しく読書の醍醐味というのかもしれない、といつも思います。

主人公は南郷ですが時折はさまれる一人称三上の箇所もいいですね。隠した過去を匂わせつつ事件は真相へ、一体誰が善で誰が悪か?先入観というものは本当に恐ろしいです。元刑務官 南郷と中堅検事 中森の、正義を正義として全うさせたいという強い信念には救われる想いがします、こういう人達もまだ実際に現場にいるのだと信じたいです。

これ以上言うとネタバレですが、本作は死刑制度の仕組み、前科を持つということ、保護観察の仕組み、そして町工場の高い技術力(!)など様々な要素も織り交ぜたヒューマンドラマとして成り立っており、お見事です。よい小説とは経験ではなく作家の素質かもなやっぱり。と乱歩賞作品一覧を眺めて思っています。他の著作も読まなきゃ、今回も必読です。

評価:(最近アタリが多いわ)

きりこについて*西加奈子

kiriko.jpgきりこは 『ぶす』 な女の子。両親にとても可愛がられて育ったため自分がぶすだなんて思ってもみなかった。ある日きりこは体育館の裏で小さな黒猫を見つける。ラムセス2世と名付けられた猫は大変賢い猫で次第に人間の言葉を覚えるようになる。小学5年生の時のある事件がきっかけできりこは引きこもりになるが、ラムセス2世はきりこを励まし続ける。そんなある日きりこは夢で見た女の子を助けるためについに外に出る決心をするのだった。きりこときりこを囲む人々の交流を描いた物語。書き下ろし。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』  『さくら』  『きいろいゾウ』  『うつくしいひと』 など。

真実とは、幸福とは何か。それを探るのが純文学。そしてきりこの猫ラムセス2世の視点で綴られた本作は、それを真正面から捉え、説いています。ネコに人生が語れるのか?語れるんです、まぁ読んでみてください。

母が 『西加奈子の視点は優しい』 と言ってましたが、これだけ登場人物達に愛情を注げるのもスゴイと思います。 『ぶす』 のきりこだけでなくAV女優のちせちゃんにもサエない押谷さんにも子どものまま30をすぎてしまったこうた君にも、きりこのかわいかった/かわいくなかった同級生達にも、みんな平等に愛情が注がれています。きりこの言う 『うちは、容れ物も中身も込みで、うち、なんやな』 に対してラムセス2世は 『それでこそ、わが、きりこだ!』 と絶賛してくれる。120%以上承認してくれるラムセス2世。私もラムセス2世のような猫(存在)が欲しい。

決してスケールの大きい話でなくむしろ小さいけれど、ラムセスの言う 『世界は肉球より丸い』 に大いに納得してしまう、広大な物語。ご一読ください。

評価:(5つ満点)
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急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
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木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
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車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
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