緑は14歳、子ども以上女未満。初恋はもう少し。話を聞くのが上手なおばあちゃんは自分の夫は失踪中。全く頼りないお母さんはかつて妻子ある男性を愛し緑を出産、その後は緑を連れて実家へ戻りふらふらしている。そんな緑のうちに謎の中年女性が訪ねてくるが。人の縁の不思議さと愛しさを描く。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』 『さくら』 『きいろいゾウ』 『きりこについて』 など。
緑、おばあちゃん、シゲおじさんを刺したムネダさんの奥さん、おかあさん(茜)、従姉の藍ちゃん、その娘の桃ちゃん。不器用な思春期真っ盛りの中学生、緑を取り巻く状況は決して 『普通』 とは言えないけど、それでもいいんじゃないだろうか。幸福幸福と追い求めなくても幸福かもしれないし、そう思えることがもしや幸福なのかもしれないし。のんびりしたストーリーのように見えてその実ショッキングな出来事も用意されており、なかなかな構成上手。でもそういうのもあるよね、と納得してしまう、もしかしてその納得することが幸福なのだろうか?
おかあさんも、藍ちゃんも、桃ちゃんも、そしてみどりもおばあちゃんも。女ばかりの一家もただ幸福なのかもしれない。 『こうふく あかの』 よりは幸福が分かりやすいです。
それにしてもこの 『こうふく あかの』 『こうふく みどりの』 シリーズで描かれているように、アントニオ猪木ってやっぱりスゴイ存在なんだなぁと改めて感心してしまいました(笑)。その影響力が、すごすぎる!
評価:(5つ満点)
世界は無数の前夜に満ちている。ノーマ・ジーンがマリリン・モンローに変わるその前夜。期待と恐怖と孤独がひとつの予感に溶けあったその前夜。記憶や日常についての文章と、言葉や本についての文章をまとめた鬼才 穂村弘のエッセイ集。
(穂村弘)1962年北海道札幌市生まれ。上智大学英文学科卒業。歌人、翻訳家、エッセイスト。『短歌の友人』 で伊藤整文学賞、『楽しい一日』 で短歌研究賞を受賞。主な著書に 『シンジケート』 『短歌という爆弾』 『もうおうちへかえりましょう』 『本当はちがうんだ日記』 など。
トンデモ歌人(笑)ホムラさん。その不器用なホムラさんが女性誌(FRAU)で読者向けにコラムを書いてたなんて…。いやホムラさんの不器用ぶりももしかして演出なのか?
『本の雑誌』 初出のコラムはホムラさんのオタクぶり100%で面白い。それによれば 『驚異、を表現できるから歌人』 だというホムラさんは語る、短い一句に言葉をいかにこめるかが歌人なのだ。そこで 『思いがけない』 言葉同士の組合せが名句を作る、なるほど。言葉のミスマッチがすなわち歌になるのだと言う、コレはいいポイントだ。
『共感と驚異』 の章は必読。こういう文章を高校の現国で読ませればいいのに。読者とは 『小説に共感を求め、詩歌に驚異を求めている』 のだそうだ、なるほど!詩歌に求められているのは、ワンダーなのだ!驚異を求める感覚が最も増大するのは思春期である、だからホムラさんはいつまでも少年の心(※のようにやたら恥ずかしがりで自意識過剰)なんだ!それは歌人 寺山修司もだ!
…としばしまた本書で盛り上がってしまいました。時々詩歌が読みたくなる私の感覚はまだ若い(思春期に近い)ってことなんですね、うんうん。
本書でも紹介されている私の好きな大村陽子氏の一句。ホムラさんと感覚が似ていることが嬉しいやら悲しい(!)やら(笑)。
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会はぬ不思議 大村陽子
さらにいくつ枕木を超えればいいのだらう。ということで本書もオタクのアナタは必読です。
評価:(5つ満点)
高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。チェーンソー片手に山仕事を始めるが、先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来に悩まされる日々。さらに村には秘密があったのだ。厳しい状況に置かれた林業を生業とする村の人々のひたむきさとそこで成長する若者を描く。
(三浦しをん)1976年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。『まほろ駅前多田便利軒』 で直木賞受賞。主な著書に 『しをんのしおり』 『光』 『三四郎はそれから門を出た』 など。
林業という身近でない話題を選んだのがまず面白い。従事する人々が山を、神様を大切にしている様子、本当にあった神隠し、など主人公 勇気が少しずつ山の暮らしを知り村へ溶け込んでくる様子が伝わってくる。三浦しをんはやっぱりこういうYA向けっぽいのがうまいな。
山で生き、山に生かされそれに感謝してる人々の様子、排他的な様子、その村人が徐々によそ者の勇気に心を開いていく様子もいい。やや夢物語過ぎるけどそれもいいでしょう。ヒルやダニや花粉の話、毎日同じ特大おにぎり弁当(たまにコロッケ入り!)などの細かい描写も良かった。
普段街で暮らす私達が知らない林業という世界とそこで暮らす人々について、実によく調べてあると思う。そこの切り口を都会で育った軟弱ナンパ青少年にしたちゃうところがやっぱり、三浦しをんだなぁ。えっとこの本でもBL要素はあったのかなかったのか?(笑)
評価:(5つ満点)
面倒くさいことは放っておくと雪だるま式に増えてしまう。そうならないための逆転の発想術とは? 面倒くさがりやの人のための55の法則を考え方/日常生活/仕事に分けて紹介。55の項目をチェックすれば面倒くさがりやでも人生困らない?
(本田直之)サンダーバード国際経営大学院経営学修士修得。レバレッジコンサルティング代表取締役社長兼CEO。日本ファイナンシャルアカデミー取締役。主な著書に 『レバレッジ時間術』 『なまけもののあなたがうまくいく57の法則』 『「デキる人」の脳 読むだけでこの効果!』 など。
面倒くさがりなんですよ、私。という人は非常に多いと思われます。だからこういう題の本を出すと売れるだろう、という目測は非常にアタリだと思われます。ということで私も図書館で借りました(つまり買ってないけど、笑)。
九九を覚えておくと後々一生楽なように、面倒くさがりはその面倒を回避するため少しの面倒をやっておくべきという指南書、その考え方は確かになるほど的なところが非常に多いです。例えば予約できるモノは全て予約する。レストラン、映画、なんでも。それがスケジューリングになる>慌てずにすむ>よりよいサービスが受けられることにつながる、とのこと。全くだわ…。で私がチェックした項目は以下です。
やる気を下げない
結局損するのは自分だけ。やる気は維持するよう心がける。
変えられないものに執着しない
渋滞などは自分の力ではどうにもできない、それに対してイライラしない。その時間をいかに有効活用すべきかを考える。
評価:(5つ満点)
警察庁キャリアでありながら息子の不祥事で大森署署長に左遷された竜崎伸也。相変わらずの変人署長として日々の任務に当たっているが異例の抜擢で米大統領訪日の方面警備本部長の任を受ける。上層部の陰謀を疑う彼の元に飛び込んできたのは大統領専用機の到着する羽田空港でのテロ情報だった。警視庁から派遣されてきた美貌の女性キャリア、空港封鎖を主張する米シークレットサービス、情報が入り乱れる警備本部で竜崎の決断は。隠蔽捜査シリーズ第3作。
(今野敏)1955年北海道生まれ。上智大学卒業。『怪物が街にやってくる』 で問題小説新人賞を受賞しデビュー。『隠蔽捜査』 で吉川英治文学新人賞、『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。TBSドラマ 『ハンチョウ~神南署安積班~』 の原作シリーズなど著書多数。
変人警察キャリア(笑)の竜崎がまたまた帰ってきました。そして今回彼が悩むのは…なんと 『恋心』 !歩く唐変木その竜崎が恋、しかも片思い!40男の純情が描かれていてちょっと怖いです(笑)。しかもその持て余した恋心を禅問答で乗り越えちゃう辺り、やっぱり相当の変人ぶりです(笑)。ちなみに雑誌連載時は 『乱雲』 という題だったそうで、単行本化にあたり改題されたそうですが、どっちかと言えば 『乱心』 じゃないでしょうかね?(笑)
竜崎が惚れてしまう警察庁美人キャリアや竜崎を 『シンヤ』 と呼びたがる(フレンドリー、笑)アメリカのシークレットサービス、そして今回もはみ出しノンキャリ刑事 戸高が大活躍です。竜崎と戸高のコンビはまだまだ続きます。今回の恋愛経験により竜崎自身、また伊丹や戸高との関係が今後どう変わっていくかも楽しみです。今回はやや平凡だったので次回のシリーズ新作には期待してます。
評価:(5つ満点)