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DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

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決起!コロヨシ!!2*三崎亜記

kekki.jpg樹は全国大会入賞後、掃除部の主将となるが校長の差し金で部費が半減し部室も奪われる。想いを寄せる偲と指導してくれていた寺西顧問は高校を去ってしまった。たった一人で掃除の道を模索する樹の成長を描く。『コロヨシ!!』  第2弾。『野性時代』 連載を改題、加筆修正して単行本化。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。主な著書に 『失われた町』 『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』 『海に沈んだ町』 。


楽しみにしていた新刊だったのに、読み進められなかったです。ずいぶん時間かかりました。コロヨシの世界になかなか入り込めなかったです。

ついに掃除と旧国技である相撲(すまい)との対決!もあるんですけど。相撲(すもう、ではなくすまい)の技の凄さには驚きます。物語は一気に政治色を帯び、掃除の舞に驚きの神秘の力があるとか、それで歴史がひっくり返った史実があるとか、面白いんだけどやっぱり荒唐無稽な話です。ここに入り込めないと読むのは辛いです。

結局今回も西域、居留地の様々な謎は解けないまま、ラスト樹達はまたまた掃除の武者修行に旅立つのでありました。様々なインタビューで三崎さんは完結だと語ってますが、このラストだときっとパート3もあることでしょう。今回から装画が宇野亜喜良風のイラストになりました、これもまたいいですね。

評価:(5つ満点)
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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない*桜庭一樹

satougasi.jpg好きって絶望だよね。子どもはみんな兵士で、この世は生き残りゲーム。なぎさのクラスに有名人の娘である藻屑が転入してきた。自己紹介で自らを人魚と名乗った藻屑は何かとなぎさにつきまとう。邪険にしていたなぎさだったが藻屑が父との関係に問題を抱えていることが徐々にわかってくる。砂糖菓子の弾丸で世界と戦おうとした13歳の少女達の戦場を描く。
(桜庭一樹)1971年島根県生まれ。小説家、ライトノベル作家。フリーライターとして活動後コンピュータゲームシナリオ、ゲームノベライズ等を手がける。 『赤朽葉家の伝説』 で日本推理作家協会賞受賞、本作で第138回直木賞受賞。主な著書に 『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』 『赤×ピンク』 『青年のための読書クラブ』 など。


読書会4月テーマ本。本作はライトノベルで初出だそうです。YA向けにしては内容がシュールすぎます、桜庭さん。海野藻屑とその父でかつてスター歌手(?)であった海野のキャラクターがいいですね。ラスト、なぎさと藻屑の担任教師が叫んだ 『生き抜けば、大人になれたのに…』 というひと言が、大人の私にはズシンと来ました。

ええっと、装丁がいいですね。角川文庫の装丁はセンスいいです。

評価:(5つ満点)

東京奇譚集*村上春樹

kitan.jpg

奇譚、それは不思議な、妖しい、ありそうにない話。しかしどこかあなたの近くで起こっているかもしれない物語。『新潮』 掲載に書き下し1編を加えて単行本化。
(村上春樹)1949年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ジャズ喫茶の経営を経て作家へ。『風の歌を聴け』 で群像新人文学賞、『羊をめぐる冒険』で野間文芸新人賞、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞、『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞、『約束された場所で―underground 2』で桑原武夫学芸賞を受賞。また朝日賞、早稲田大学坪内逍遥大賞、フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、世界幻想文学大賞、エルサレム賞などの海外の文学賞を受賞。翻訳多数。
(収録作品)偶然の旅人/ハナレイ・ベイ/どこであれそれが見つかりそうな場所で/日々移動する腎臓のかたちをした石/品川猿


読書会3月テーマ本。私にとってハードルの高い村上春樹ですが、新幹線の中だとよく読めました。品川猿、がよかったです。あとは奇譚集というより異譚集というイメージでした。

村上春樹の小説の登場人物はみんな、すごく自立している人が多いです。人に頼らず自分の足で世界のどこまでも歩いていく。迷わない。強い。その人物像に読者はみんな自分を重ねるのか、それとも憧れるのか、どちらなんでしょう。

評価:(5つ満点)

地下の鳩*西加奈子

tikahato.jpgあの頃自分は死んでいた。心を殺して噓をつき続けていた。大阪ミナミの繁華街。キャバレーの呼び込みにまで落ちぶれた吉田、OL生活から雇われママになったみさを、そしてゲイバーのママ ミミィ。夜の街に棲息する彼らの懸命で不恰好な生き様を描く。『オール讀物』 掲載の2編を単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』  『さくら』  『うつくしい人』  『きりこについて』 『漁港の肉子ちゃん』 など。
(収録作品)地下の鳩/タイムカプセル

地下の鳩

大阪ミナミの繁華街で呼び込みとして働く吉田も、雇われママのみさをも、どうしようもない境遇にあるからこそ惹かれあうのだろうか?愛情とは何か、に鋭く迫る秀作です。たまにこういう切れ味鋭いナイフのような小説を読みたくなりますね。

タイムカプセル
そしてこの地下の鳩のスピンオフとしての続編、タイムカプセル。こちらの秀逸さ、ぜひ読んでください。ミミィはお世辞にも美しいとはいえないゲイバーのママ。でも客を大事にしホステス達を大事にし、店を大切に守ってきた。いつもは常連が多い店に、ある日突然イケメンの二人組がやってくる。この二人が来た途端なぜか常連客の一人がピタリと店に来なくなって…。

心優しいミミィの持つ悲しい過去、そして同じく心優しいミミィの周りの人々の持つ悲しい過去。 『子どもの頃にいじめられた人は、一生その傷を背負っていかないとならないのでしょうか。』 というホステスの言葉が、深く深く心に残ります。

評価:(大阪で生まれた女やさかい~♪)

パイナップルARMY*工藤かずや/浦沢直樹

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日系アメリカ人ジェド・豪士はベトナム、アフリカの各戦線を渡り歩いた傭兵。ある事件をきっかけに傭兵を引退した彼は民間軍事顧問機関CMAで戦闘インストラクターとして様々な事情を抱える人々に戦闘をレクチャーしている。数々の戦歴を持つ彼は次第にヨーロッパ全体を脅かすテロに巻き込まれてゆく。原作:工藤かずや、作画:浦沢直樹。ビッグコミックオリジナル連載(1985~1988)を単行本化。
(工藤かずや)長野県生まれ。漫画原作者。主な代表作に 『ゴルゴ13』 『信長』 など。
(浦沢直樹)1960年東京都生まれ。明星大学卒業。漫画家。『YAWARA!』 『MONSTER』 『20世紀少年』 で小学館漫画賞、『MONSTER』 『20世紀少年』 『PLUTO』 で文化庁メディア芸術祭優秀賞、『MONSTER』 『PLUTO』 で手塚治虫文化賞、『20世紀少年』 『21世紀少年』 で講談社漫画賞、日本漫画家協会賞大賞、星雲賞を受賞。代表作はやっぱり誰が何と言っても 『MASTERキートン』 。


火消し屋小町に続きマンガ天国。冗談でなく20数年前から揃えたいと思っていた本作、突然古本屋で集めることにしました。連載は80年代、30年以上も前だ!しかし今なお色褪せない浦沢作品の魅力。浦沢直樹はこの作品で連載がスタートしたのではないでしょうか、記念すべき作品ですね。舞台は80年代アメリカが中心。日系アメリカ人の豪士はベトナム戦争帰りの傭兵。ベトナム戦争に行ってたってことは少なくともその頃20代だったわけで、となると豪士は1950年生まれくらいになります!今生きてたら60代だ。今も元気でいてくれそうな気がします。

凄腕の傭兵だった豪士、ある事件をきっかけに傭兵を辞めて戦闘インストラクターとなる。1巻の最初の4作位は読み切りだったそうです、そこで人気が出たので連載となり、1巻の最初からいきなりアメリカ軍のクーデターというやたらに大きな内容になってます。傭兵時代の仲間が豪士を慕って続々と集結する様子は、まるで特攻野郎Aチームですね。きっとこれにインスパイアされたに違いない。

物語の中盤から徐々に現れる謎の日本人テロリストの存在。豪士を目の敵にする彼はついにヨーロッパ壊滅計画を打ち立て、豪士らAチームは、じゃなくて仲間達はそれに立ち向かう!それにしても時代を感じるのはベトナム戦争もですが各国の大統領、レーガン、ミッテラン、そしてゴルバチョフなどが続々出てくるところですね!そうだったそうだった…まさに歴史の勉強です。

全8巻ですが、8巻のラストが1巻の最初につながっている、というちょっとした仕掛けも最後まで楽しめます。この後あの 『MASTERキートン』 が始まります、浦沢氏は豪士に文型の要素を加えたヒーローを描きたかった、と連載初期の頃話してました。あのキートン先生は、豪士という存在から生まれたのです。そういう意味でも非常に感慨深い作品です。

今なお色あせない、初期の浦沢作品。上質なマンガを読みたいあなたにぜひオススメします。本当に昔のマンガは面白かった…プロット、作画、すべてが完璧です。

評価:(この素晴らしい作品が全8巻で1,020円!バンザイ!)

虐殺器官*伊藤計劃

gyakusatu.jpg911以降、後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。その背後で常に関与が囁かれる謎の米国人ジョン・ポールの存在。果たしてジョン・ポールの目的とは。そして大量殺戮を引き起こす 『虐殺の器官』 とは何か。彼を追う米軍将校シェパードの視点から描く。
(伊藤計劃)いとうけいかく。1974年東京都生まれ、2009年没。武蔵野美術大学卒業。本作は小松左京賞最終候補となる。『ハーモニー』 で 日本SF大賞、星雲賞日本長編部門、フィリップ・K・ディック賞特別賞受賞。


伊藤計劃のデビュー作。たった2年の執筆生活でしたが内容が濃いです。伊藤の設定する近未来の緻密さは本当にすごいです。

軍用、民間飛行機に共に使用される人工筋肉なる 『部品』 、シェパードら軍人に施される、脳をコントロールし良心を排除して戦うことのできる 『システム』 、いずれも緻密な設定とその効用が描かれており、なるほどこれならうまく行くだろうと思わせるものがあります。

舞台設定は911以後、20年位経った頃でしょうか。情報網が非常に発達しても、なおも世界を動かす 『暗殺計画』 には米軍のエキスパートである特殊部隊が自らの手を使って任務に当たらなくてはならない。任務遂行のために不要な良心をコントロールするシステム。脳科学が発達すれば、良心も痛みもコントロールできるとされる社会。そしてそのようにコントロールされる自分達はもはや、人間ではないのではないか。主人公シェパードと共に読者も考えるのです。

良心が痛まなければ、子ども兵を倒すことも苦痛ではない。痛みを感じなければ、作戦遂行の意志が崩れることはない。1970年代のベトナム戦争の頃から、何も変わっていないのだと説く伊藤。

そして物語を貫く大きな謎。大量虐殺が急に行われるようになった後進国に必ず現れる謎の米国人ジョン・ポールの存在。高度に情報網が発達し誰もがネットワークに管理されている世の中で、どこの国境でも検閲でもかからないポールの存在とは。管理されれば犯罪がなくなる、ということは幻想なのだと切々と説く伊藤。

そして衝撃のラスト。このあまりの衝撃に小松左京賞逃したのかも、あまりに救いがないので。それでもなお伊藤計劃が小説を通して伝えたかったのは社会の退廃ではなく、その退廃の中から希望を見出さなくてはならないということだと、感じるのです。かえすがえすも彼の早世が悔やまれます、もっと沢山作品を遺して欲しかったですね。

『ハーモニー』 もぜひご一読ください。

評価:(5つ満点)

ハーモニー*伊藤計劃 2011/05/29

オペラ座の怪人 25周年記念 in ロンドン

opera25.jpgロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールにて行われた25周年記念公演。終幕後アンドリュー・ロイド・ウェーバー自身による挨拶、歴代のファントムやサラ・ブライトマンによるオペラ座ナンバーのサプライズあり。19世紀中頃のパリ・オペラ座。そこではオペラ座の怪人の仕業とされる奇怪な事件が人々を震撼させていた。醜く歪んだ顔を仮面に隠しオペラ座の地下深くに暮らす怪人は、コーラスガールのクリスティーヌに心を寄せる。そして音楽の天使として彼女に近づき、プリマドンナに仕立てるべく夜ごと歌を指導していた。しかしクリスティーヌは再会した幼なじみのラウル子爵と愛し合うようになる。それを知り嫉妬に狂った怪人がとった行動とは。

ロイヤル・アルバート・ホールの広さ!深さ!すごすぎます、まさにここはオペラ座。天井桟敷の席だと何も見えないのでは…という深さです。オーケストラが通常は舞台の下の方にいますが、ここでは舞台の上の方にいるのもすごいです。観客席が上まであるから、オケが下だと音が届かないのかも。俳優達の歌唱力はさすがです、さすが選ばれた人々という感じなのですが、残念だったのは舞台装置の背景が、すべてスクリーンに映した映像だったということ。確かに便利だけど何か手抜き感がぬぐえません。衣装、小道具、大道具、どれをとってみても劇団四季の方がすごいです。やはりジャパニーズ・ブロードウェイ、四季はすごかった!と改めて四季の舞台の素晴らしさをここで実感してしまいました。

しかし迫力は満点です、しばしば映画だということを忘れて拍手しそうになりました。ラストのおまけもすごいです、ウェーバーさんがオペラ座についてあれこれ喋るのもすごいことですが、彼が 『My angel of music !』 と紹介したサラ・ブライトマンが出てきて、歴代のファントムを務めた俳優4人と一緒にオペラ座ナンバーを唄う!これはゴージャスすぎるカーテンコール!3時間上映は長かったですが満足しました。やっぱりまた四季のオペラ座を観に行きたくなりました、今年中に行けるかなぁ。

評価:(演劇ファンのあなたに)

火消し屋小町*逢坂みえこ

hikesi.jpg夏子は内定が決まっていた会社の倒産により、消防士の試験を受け合格。消防学校に入校するも破天荒な性格で周囲を乱す行動ばかり。どうにか卒業して配属された沼川出張所でだんだんと消防士としての自覚が芽生えるのだが。第一線で活躍する女性消防士夏子の活躍を描く。ビッグコミックオリジナル不定期連載(1988~2004)を単行本化。
(逢坂みえこ)1957年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。漫画家。主な作品に 『ベル・エポック』 『育児なし日記vs育児され日記』 など。


ずっと我が家にはこの1、2巻だけあり、ふと思い立って3、4巻も無事古本屋で買ってきました。やっと揃ったぞ。足かけ16年の連載…はそうだっけ、本当にそんなにかかった?短大卒業後内定が決まっていた会社の突然の倒産により、好条件・公務員というだけで選んだ消防士試験に 【たまたま】 受かった夏子。同期の4人の女子学生と共に消防学校で半年間学び、現場に出るというストーリーなんですが。

連載時もよく 『本作品はフィクションです。実際に夏子のように現場で消火活動にあたる女子消防士はおりません』 というようなことが掲載されていたように思えます。実際、重いホースや装備を背負い、火事現場に女子が入る、というのはなかなかに非現実的ではありますが、単にヒーロー、じゃなくてヒロイン物ではなく現場の消防士達の葛藤、成長を女子という立場から描こうとした作者の想い、結構共感できます。破天荒な現代ムスメの夏子、消防学校同期の生真面目ムスメ相原、消防士だった夫と離婚して自分も消防士を目指すバツイチ山田、薬剤師を辞めて消防士を目指す既婚者岡、という個性豊かな消防学校の同期学生達、夏子が配属された沼川署の面々との丁々発止など、ギャグ要素も盛り込みながら消防の仕事に真っ向から取り組んだ本作、骨太で非常にいいです。

どうも、私こういうお仕事モノに昔から弱いらしく、特に普段見聞きすることの少ない消防士のお仕事なんて、連載時も非常に興味深く読ませていただきました。イッキ読みも楽しいですね。青年誌掲載ですが女性誌連載の多い逢坂氏、男性にも女性にも楽しめるマンガとなっております。もちろん恋愛模様もあります。

夏子のように、自分の生きる道を見つけて邁進して生きたいものですね。消防士を目指す人も目指さない人も、ぜひご一読を。

評価:(昔のオリジナル掲載作品はどれも本当に面白かった)
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プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
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兼業主婦
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