事件解決の鍵は刑事の情熱と勘と経験だ。昭和50~60年代を舞台に地道な捜査で容疑者を追い詰める刑事の事件簿。オール讀物に掲載された全4作品を単行本化。
(乃南アサ)1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。
(収録作品)アメリカ淵/渋うちわ/また逢う日まで /どんぶり捜査
舞台は昭和50~60年代。なぜわざわざ今、その時代を背景に?古き良き時代、習慣、人と人とのつながりが残っていた時代だから、でしょうか。ダイアナ妃結婚、TDL開園など昭和のニュースを背景に物語が進みます。
思えばこの時代、刑事さんの家庭もご主人を陰で支える健気な妻、という像がまだまだ成り立ってました。事件もシンプルだったし。このシンプルさがかえって新鮮でした。まだ殺人犯にも多少なりとも人間味が残っており、刑事の役割も人情を前面に出してやっていけた時代、ということを乃南氏は言いたかったのでしょうか。
一体どこからこの国は、この国の犯罪は変わってきたのか?恨み辛みではなく人を殺しておいて 『誰でもよかった』 という犯人が増えてきてしまったのか?ということを考えさせられる一冊です。
評価:(5つ満点)