悩める患者達が訪れる伊良部総合病院神経科。薄暗い地下室にある神経科のドアをくぐるとトンデモ精神科医、伊良部が登場。見た目中年、中身5歳児の伊良部に度肝を抜かれる患者達、自分の病気はどうなった?水泳中毒、ケータイ中毒、被害妄想など悩める患者達とトンデモ精神科医のふれあい!を描いた連作短篇集。
(奥田英朗)1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て作家に。『邪魔』 で大藪春彦賞、本作で第131回直木賞を受賞。主な著書に 『ガール』 『サウスバウンド』 など。
(収録作品)イン・ザ・プール/勃ちっ放し/コンパニオン/フレンズ/いてもたっても
伊良部…名医か迷医か?
水泳中毒で1日1キロ以上泳がないと落ち着かないサラリーマン、●起状態が治まらないサラリーマン(うう…気の毒すぎるっ)、ストーカーに狙われている被害妄想を持つ派遣社員、ケータイ依存症の高校生、そして火元を確認せずにはいられない雑誌記者。いずれも自分では押さえきれない行動を抱えながらそれを異常だと気付いている患者達。
そんな重症の患者に対して決して自らのスタイルを変えず、そして真摯に(?)患者の悩みに付き合う伊良部、もしかしてかなりのいい医者かも?だって水泳中毒の患者と一緒に泳ぎには行かないでしょー普通。女優志望のストーカー妄想の患者と一緒に映画のオーディションを受けに行かないでしょー普通。そんなことしちゃうのがDr.伊良部。こんなにも患者とマンツーマンで、しかも診療時間以外も付き合ってくれる医者はいませんね、やっぱり名医?
『トラウマ論否定』 『カウンセリング無意味主義』 が気に入りました、いいなぁこう言い切っちゃう医者。でも本当にこんな医者いたらイヤだけど。でも怖いもの見たさというか、Dr.伊良部の診察を受けてみたいとかちょっと思ったりして。でも毎日注射はイヤだー!
装丁もいいです、写真の構成、キラキラ光るカバーもいい感じ。この写真はやっぱり…Dr.伊良部?
評価:(5つ満点)
キキともうひとりの魔女
16歳になったキキ。ある日突然12歳の女の子、ケケが転がり込んできます。キキの大事な友達のとんぼやミミとも仲良くなったケケは、それまでキキが努力して築いてきたコリコでの穏やかな生活を崩そうとしているかのよう。キキの心は不安でいっぱいになります。やがてキキの心は成長し、ケケを理解することでまた大きく成長するのです。
(角野栄子)1935年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。25才の時にブラジルに2年間滞在。『ズボン船長さんの話』 で旺文社児童文学賞、『おおどろぼうブラブラ氏』 で産経児童出版文化賞大賞、『魔女の宅急便』 で野間児童文芸賞、小学館文学賞他を受賞。
3巻から急に話が難しくなります。中学生以上向きかな。キキも16歳になったからでしょうか?思春期の不安定な気持ちが大きくキキを支配します。キキのケケに対する苛立ち、とまどい、嫉妬がよく描かれている分、少し辛い部分もあります。
16歳という微妙な年齢、子どもではないが大人でもない、不安定な時期を描いてよくできているのですが、何となく3巻は前2巻に比べるとまとまりがない感を受けます。キキの心の乱れぶりがうつるから?でも自分の気持ちに正直なキキは可愛いですね。
評価:(5つ満点)
キキは13歳の魔女。魔女のしきたりでは13歳になると一人立ちをしなくてはなりません。キキも旅立ちの日を迎え、相棒の黒猫ジジと共に 『自分の町』 を探して故郷を旅立ちます。親元を離れ自立する少女の期待と不安を描いた児童文学。福音館書店 『母の友』 連載作品。
(角野栄子)1935年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。25才の時にブラジルに2年間滞在。『ズボン船長さんの話』 で旺文社児童文学賞、『おおどろぼうブラブラ氏』 で産経児童出版文化賞大賞、『魔女の宅急便』 で野間児童文芸賞、小学館文学賞他を受賞。
やっと読み始めました。数年前から読もうと思っていた本作、 『児童文学週間』 と銘打って一気に読みます。
ひとり立ちするということ、親の庇護から離れたった1人で全てを対処するということ。わずか13歳のキキは魔女として生きていくため、昔からの伝統にのっとって13歳で家を出ます。
キキは大きな街コリコで生活を始めますが、最も大切なことは 『魔女として生きること』 、それは街の人々にとって自分という魔女が 『必要な存在』 にならなくてはならない、ということ。実に難しい。魔女の修行の一番大きな意味合いは、魔女が今も存在し人々の生活に役立つことができる、ということを体現することだそうです…うーん難しい。
キキはおなじみ 『お届け屋さん』 宅急便を始めますが、様々な 『もの』 を運びます。時に突拍子もないものを頼まれたりします、そして 『もの』 を運ぶうち、宅急便がモノそのものだけではなく 『心』 も運んでいることに気付くのです。
大きな街での魔女に対する偏見、孤独、様々な困難に出会いながらも自分を見失わず前進するキキ。新しい出会い、友情、恋模様もあります。スタジオジブリの映画の原作として著名な本作ですが、映画とは異なる原作の世界観、キキの性格が新鮮です。
評価:(小学生の初めての読書に)